更年期を迎える頃から、これまで感じたことのなかった関節の痛みやこわばりに悩む方は少なくありません。朝起きたときに指や膝が動かしにくい、階段の上り下りで関節が痛む、天候や体調によって痛みが強まるなど、日常生活のなかで違和感を覚える場面が増えることがあります。更年期には女性ホルモンの分泌が大きく変化し、その影響は自律神経や骨、筋肉、関節など全身におよびます。関節の痛みもその一つとして現れることがあり、ほてりや発汗、気分の波といった更年期症状と同時にみられることもあります。一方で、関節痛の原因が更年期とは別の病気である場合もあり、見分けが難しい点も特徴です。
この記事では、更年期と関節痛の関係を整理し、症状の特徴や原因の考え方、日常生活での向き合い方、医療機関を受診する目安を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
更年期と関節痛の関係

更年期に関節の痛みを感じる人の割合を教えてください
更年期前後の女性で、関節や筋肉の痛みを感じる方は少なくありません。日本人女性を対象とした報告では、更年期外来を受診している40〜59歳の女性のうち、約56%が日常的に関節や筋肉の痛みを自覚していたとされています。つまり、更年期の症状で病院を受診する方のうち、2人に1人以上が関節の痛みを感じていることになり、更年期の関節痛は身近な症状の一つといえます。
参照:『Muscle and joint pains in middle-aged women are associated with insomnia and low grip strength: a cross-sectional study.』(J Psychosom Obstet Gynaecol.)
更年期に発生する関節痛の特徴を教えてください
更年期にみられる関節痛の特徴として、はっきりとした腫れや変形を伴わず、痛みやこわばりが中心である点が挙げられます。朝起きた直後に指や手首、膝が動かしにくく感じられ、しばらく身体を動かすと和らぐことがあります。また、左右の関節に同時に痛みを感じたり、日によって痛む部位が変わったりすることもあります。天候や気温の変化、疲労や睡眠不足によって症状が強まる場合もあり、痛みの出方が一定しないことも更年期の関節痛によくみられる特徴です。さらに、ほてりや発汗、気分の落ち込みといった更年期症状と同時期に現れ、全身の不調の一部として関節の違和感が出てくることもあります。
更年期の関節痛と間違えやすい病気はありますか?
更年期の関節痛と似た症状を示す病気はいくつか存在します。代表的なものとして、関節の軟骨がすり減ることで痛みが生じる変形性関節症や、免疫の異常によって関節に炎症が起こる関節リウマチが挙げられます。これらの病気は、痛みが持続しやすい、関節の腫れや熱感を伴う、動かしにくさが時間とともに悪化するといった特徴がみられることがあります。
更年期に関節痛が生じる理由とメカニズム

なぜ更年期に関節が痛くなるのですか?
更年期に関節の痛みが生じやすくなる背景には、女性ホルモンの変化があります。更年期には卵巣の働きが低下し、エストロゲンの分泌量が大きく変動しながら少なくなっていきます。エストロゲンは月経や妊娠に関わるだけでなく、関節や筋肉、骨の状態を保つ働きにも関係しています。そのため、更年期にこのホルモンの影響が弱まることで、関節に違和感や痛みを覚えやすくなります。さらに、更年期には自律神経のバランスが乱れやすく、全身の不調の一つとして関節の痛みが現れることもあります。
更年期に関節が痛くなるメカニズムを教えてください
更年期の関節痛は、いくつかの身体の変化が重なって生じると考えられています。エストロゲンの影響が弱まることで、関節を包む滑膜や軟骨、靱帯、腱の柔軟性が低下し、日常の動作でも関節に負担を感じやすくなります。また、炎症を抑える働きが弱まることで、関節の周囲に軽い炎症が起こりやすくなり、痛みとして自覚されることがあります。さらに、更年期には筋肉量が減少しやすく、関節を支える力が弱まる点も痛みにつながります。加えて、精神的な緊張や不安、睡眠の乱れが重なると、自律神経を介して痛みを強く感じやすくなります。

