とっさの反論でまさかの結末に
「正しいカレーって、ただ自分がそう思い込んでいるだけですよね? 世の中にはごまんとカレーがあって、間違いなんてありません。それに、私の母のカレーまで侮辱されたようで……本当に頭にきてしまって」胸の奥がギュッと締めつけられ、気づけば亜希子さんは笑顔のまま、こう返していました。
「『結局、お義母さんが自分の固定観念の中でしか生きていないってことですよね。ちなみに、お義母さんの“正しいカレー”を食べてきた息子さん、昨晩このカレーをおかわりして『最高だ』って言っていましたよ。それに私は母の色んなカレーを食べて育ってきました。グリーンカレーもバターチキンカレーも。頭が柔らかい母で本当に良かったです』」
すると義母は、みるみる顔を赤くして声を荒げたそう。「『こんな貧乏くさいカレー作って偉そうにすんじゃないわよ! 頭が硬い? バカじゃないの? 基本に忠実なのが一番なのよ、ものを知らないのね!』吐き捨てるようにそう言うと、義母は上着を掴み、ドアを乱暴に閉めて帰っていきましたね」
「それ以来、お義母さんとの仲は最悪ですが……」そう前置きしつつ、亜希子さんは少し苦笑いを浮かべました。
「母親のカレーを馬鹿にするようなことを言われて、どうしても黙っていられなかったんですよね。そして決めつけで人を否定する義母に、ひとこと言ってやらないと気が済まなくなってしまって(笑)」
正しさを振りかざし、人の育ってきた背景まで踏みにじる。その一皿のカレーは、義母の価値観の狭さを浮き彫りにするリトマス試験紙となったのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

