春になると思い出す、A美さんの後悔エピソード。
シングルマザーの母が苦労して用意してくれたランドセルや学習机を、大切にせず手放してしまったA美さん。
しかし、自分が親になった今、母の想いの大きさに気づきます。
もう戻らない時間と、取り戻せない大切なもの──。
後悔とともに、これから娘に伝えていきたい想いとは。
春になると思い出す
春になると、毎年思い出すエピソードがあります。
私が小学校に入学した頃のことです。
当時、母はシングルマザーで、生活は決して楽ではありませんでした。
それでも、入学にあたって必要なものを揃えなければなりません。
母がとくに悩んでいたのは、ランドセルと学習机の金額だったそうです。
ランドセルは6年間、学習机はそれ以上使うもの。
「どうせなら、ちゃんとしたものを持たせてあげたい」
そう思った母は、本職に加えてアルバイトを増やしたり、祖父母に頭を下げてお金を借りたりして、なんとか一式を揃えてくれたのだと、後になって知りました。
新しいランドセルを背負い、ピカピカの机に向かったときのことは、今でも覚えています。
幼かった私は、ただただ嬉しくて、目を輝かせていました。
そんな私を見て、母も嬉しそうに笑っていました。
母の想いを無視した私
けれど、子どもというものは勝手なものです。
小学4年生になる頃、私の通っていた学校では、高学年の女子の間ではランドセルではなく、トートバッグで通学するのが流行りました。
私も例にもれず、その流行に乗りたくなりました。
「もうランドセル、ダサいよね」
そう思い、100円ショップで買ったトートバッグを使うようになり、ランドセルはすっかり使わなくなってしまったのです。
それだけではありません。
学習机も、だんだんと「子どもっぽい」と感じるようになり、私は勝手に手を加えてしまいました。
上の棚の部分を外し、さらには処分までしてしまったのです。
それを見た母は、珍しく強い口調で怒りました。
「なんでそんなことするの! 机だってランドセルだって、高かったのよ!」
けれど当時の私は、母の苦労や想いなどまったく理解していませんでした。
「これでいいの!」
そう言い張り、母の言葉をはねつけたのです。
結局、それからランドセルを使うことは一度もありませんでした。
学習机も、高校生になる頃には処分してしまい、自分のアルバイト代でスタイリッシュなデスクを新調しました。
「自分の稼いだお金を使って、おしゃれなモノを持つ」ことに、当時は満足していましたし、なんの罪悪感も抱いていませんでした。

