●生きる可能性を狭められない世界へ
国際機関に転身したのは、第1子出産もきっかけだった。スイス人の上司も2人の子育て中で働きやすい環境だと感じている。また、スイスで難民認定された南アジア出身の人など、同僚は中東・アフリカ・南米など各国から集まる。「さまざまな背景を有する人と『人権』の話を真正面からできるのは、やはりすごく面白い」といい、日々学びを深めている。
現在、国連で働く日本人は1000人弱で、より多くの人材が求められている。後進の弁護士に向け「準備が完璧になってからなどと躊躇せず、トライしながら経験を積めばいい。本業の外での経験も整理して書けば職務要件に当てはまります」とエールを送る。また、「弁護士は、自分で仕事の機会を開拓し、経験を積んでいける立場」だと説明。単なる資格ではない、自由に自分の道を決められる職業だと感じている。
現在の業務では、母国における虐殺など凄惨な迫害を逃れる中で、強制労働や人身取引の被害者となるケースを多く目にした。政府や他の国連機関と連携し救出に力を入れる一方、難民条約未締結国の事案などで、深刻な迫害の危険がある国へ戻らざるを得ない被害者もおり、忸怩たる思いを抱いた。
「国際人権法に関わる法律家として、できることは本当に少しですが、せめて最低限の人権、そして生きる可能性を狭められない社会の設計に尽力したい」。人が人として尊重される世界の実現を目指して、鈴木氏は一人一人、一つ一つの仕事と向き合い続ける。
【プロフィール】 すずき(たしろ)・ゆき 東京大学法科大学院修了。在学中、NGOで難民支援に従事。2017年弁護士登録後、西村あさひ法律事務所で国際公法関連分野(通商業務、ビジネスと人権分野等)を担当し、プロボノとして難民申請支援を行う。現在は外務省のJPOプログラムで、OHCHRのアソシエイトエキスパートとして働く。

