マーリンズ9―2ホワイトソックス(31日、マイアミ)ホワイトソックス・村上宗隆内野手(26)が「2番・一塁」で先発出場し、4打数1安打だった。三回1死一、二塁で迎えた第2打席。見事に二遊間を抜く中前打を放ち、メジャー初の適時打を記録した。すでに3本塁打を放ち持ち前の長打力を発揮している村上にとって、これが記念すべきメジャー初のタイムリーヒットとなった。
しかし、日本の至宝が刻んだ鮮やかな一打への歓声は、あまりにもまばらだった。
この日、ローンデポ・パークに足を運んだ観客数はわずか6667人。前日30日(同31日)の同カードも6515人という惨状で、3万6000人強を収容できる近代的なスタジアムには、空席の目立つスタンドと、打球音だけが虚しく響き渡る光景が広がっていた。
この閑散とした光景を見て、強烈な違和感や寂しさを覚えた野球ファンは多いはずだ。なぜなら、この球場が「世界一熱狂的な空間」だったのは、遠い昔の話ではないからだ。あの地鳴りのようなWBCの熱狂は、一体どこへ消えてしまったのだろうか。
たった2週間前、そこは「世界で一番熱い場所」だった
時計の針をほんの少し、約2週間前へと戻そう。
このローンデポ・パークは、2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝ラウンドの舞台として、世界中の熱視線を集めていた。米国代表とベネズエラ代表が激突し、ベネズエラが3―2で米国を破り初の世界一に輝いた決勝戦では、3万6190人の超満員の観客がスタンドを埋め尽くした。各国のファンが持ち込んだ鳴り物や割れんばかりの声援で、球場全体が震えるような大歓声に包まれていたのだ。
興味深いことに、WBC期間中、一部の米国の記者からは「ローンデポ・パークはMLBの使用球場としては収容人数が少なく、世界大会の決勝のベニュー(開催地)としてふさわしいのか」という懐疑的な意見も出ていた。実際に連日満員札止めで4万、5万と入る球場の方がいいのではという考えと、マイアミでやるからこそベネズエラやドミニカ共和国のファンが集まりやすく、熱気が生まれるのだという議論が交わされていた。
日常という名の「残酷なコントラスト」
華やかな国際大会の祭典が幕を閉じ、メジャーリーグの長いレギュラーシーズンという「日常」が始まると、球場は全く異なる顔を見せている。
もちろん、今回のカードには同情すべき点もある。対戦相手のホワイトソックスは、2023年に101敗、続く2024年にも121敗、2025年も102敗と、3年連続で100敗以上を喫している歴史的な低迷期にある。開幕ウイークとはいえ、カードの魅力という点では観客動員が不安視されていたのは確かだ。
とはいえ、マーリンズ自身の集客力も深刻だ。昨季(2025年)の1試合当たりのホーム平均観客動員は約1万4000人台にとどまり、MLB全30球団の中でも常に下位に沈んでいる。もともと「人気がある」とはお世辞にも言えない球団なのだ。
「マイアミのスポーツ熱」と、置き去りにされるマーリンズ
マイアミを含むいわゆる「グレーター・マイアミ都市圏」は、約600万人超の人口を擁する巨大マーケットである。ヒート(NBA)、ドルフィンズ(NFL)、そしてインテル・マイアミ(MLS)など、他のプロスポーツチームは確固たる人気と熱狂を獲得している。
その中でマーリンズは、1997年と2003年に2度のワールドシリーズ制覇(世界一)に輝いているにもかかわらず、なぜか地元ファンの心を掴みきれていない。
この「WBCとレギュラーシーズンの落差」を最も肌で感じているのは、実は地元の人々かもしれない。WBC決勝ラウンドを取材した者によれば、球場からの帰りに利用したUberの運転手がこんな話をしてくれたという。
「ここ(リトル・ハバナ)にある球場はもともと周辺が渋滞しやすいんだけど、今回はレギュラーシーズンの感覚で来たら痛い目を見たよ。WBC期間中の渋滞は、普段のマーリンズ戦の何百倍もひどいからね」
レギュラーシーズンでは渋滞が起きても、それほど酷いものにはならないとプロのドライバーの頭にインプットされているほど、マーリンズのレギュラーシーズンの試合には客が入らないというのが実情なようだ。
閑散とした日常と、選ばれ続ける理由
ローンデポ・パーク自体は、開閉式の屋根を備え、マイアミの気候に合わせた素晴らしいボールパークである。そして、わずか2週間前に3万6190人が生み出した熱狂と、Uberの運転手を悩ませたあの凄まじい大渋滞が証明したように、マイアミという都市に野球への情熱がないわけではない。ラテンの血が騒ぐこの街のファンは、一度火がつけばどこよりも熱狂的な空間を作り出すポテンシャルを秘めている。
村上宗隆の記念すべきメジャー初適時打が、空席の目立つスタンドに虚しく響く今の静けさからは想像もつかないかもしれない。しかし、一度国際大会の舞台となれば、この球場は世界中のどのスタジアムよりも熱い「聖地」へと変貌を遂げる。
キャパシティへの懸念がありながらも、2023年、そして今回の2026年と、2大会連続でWBCの決勝会場にこのローンデポ・パークが選ばれた理由は、まさにその「熱狂を呼び起こす底知れぬポテンシャル」にあるのだろう。

