●最高裁の判断は企業のデザイン戦略に影響
──最高裁ではどのような点が争点となりそうでしょうか。
先ほども述べたように、この事件の背景には、同一の椅子について著作物性を認めた判決と否定した判決がある、という「評価のズレ」があります。
最高裁では、このズレを踏まえ、応用美術をどこまで著作権で保護するのかについて、大きな基準が示される可能性があります。
具体的には、(1)分離可能性(機能と美の切り離し)を中核に据えるのか、(2)創作性の有無を他の著作物と同様に判断(非区別説)するのか、(3)意匠法との役割分担(制度のすみ分け)をどの程度正面から位置づけるのか、といった点が主な争点になる可能性があると考えています。
また、不正競争防止法の観点からは、形そのものが「商品等表示」になりうる条件や、「類似」判断の具体的な見方がどこまで整理されるかが注目点です。
とくに、全体観察で似ているかをみる際、機能部分の比重やデザインの直線性・曲線性といった印象の要素をどう評価するかという指針がより明確化される可能性があります。
最高裁の判断は、企業のデザイン戦略にも大きな影響を与えるでしょう。
現時点でも、実用品のデザインを守るには、第一に意匠登録、第二に不正競争防止法(形そのものがブランド化した場合)、第三に限定的な著作権と、多層的に考えるのが基本戦略だといえます。
今回の最高裁の判断によって、応用美術の判断の枠組みと不競法の類否の見方が整理されれば、企業はより計画的に、自社デザインの多層的な防衛を設計できるようになるでしょう。
【取材協力弁護士】
唐津 真美(からつ・まみ)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。アート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般を主に取り扱う。特に著作権・商標権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス、執筆、講演多数。文化審議会著作権分科会の委員も務める。
事務所名:高樹町法律事務所
事務所URL:https://takagicho.com/

