日本のコンビニエンスストアで、外国人の男性が購入前のカップ麺にお湯を注いでいる様子の動画がSNSで拡散し、波紋を広げています。
投稿された人物はタイ人とみられ、現地では購入前でも店内でお湯を入れることが一般的とされる文化の違いが背景にある可能性も指摘されています。
しかし、日本では会計前の商品を開封、使用する行為には法的リスクがありそうです。
●万引きした商品が店内にあっても「窃盗」
窃盗罪の成立には、前提として他人の財物を「窃取」(せっしゅ)することが必要です。
「窃取」といえるには、その物に対する支配(占有)を自分または第三者に移転する必要があります。
この「支配」の移転は、スーパーマーケットなどでは基本的には店舗外に持ち出した場合に認められることとなりそうです。
しかし、店舗内に商品が未だにある場合でも、商品の「支配」がうつったと評価されることもあります。
古い判例では、万引きした靴下を懐の中におさめたときに窃盗罪の成立が認められています(大判大正12年4月9日)。
また、大型店舗の家電売り場で、テレビをレジで精算せず、店舗内の男性用トイレに入り、洗面台の下にある収納棚に入れたときにも、窃盗罪の成立が認められています(東京高判平成21年12月22日)。
●タイ人男性を罪に問うことは難しい
今回のケースでは、カップ麺の「支配」をタイ人男性の下に移したといえることが必要になります。
たしかに、「蓋を開けてお湯を注ぐ」ことで、このカップ麺はすでに元通りにすることができなくなっており、「窃取」したといえそうにも思えます。
しかし、先ほど説明した裁判例などからすると、「窃取」の判断はその物を「消費」したかどうか、という観点よりも、物に対する物理的な「支配」が及んでいるかどうかを重視しているようです。
カップ麺は未だにコンビニの中にあり、レジの近くにある給湯器でお湯を注いでいる段階では、カップ麺を支配しているのはタイ人男性ではなく、店主と考えるのが自然です。
したがって、窃取したとはいえず、罪を問うことは難しいでしょう。

