ご主人が見せてくれた一枚の写真
翌日、先輩から「Yさんのご主人があなたを呼んでいるよ」と声をかけられました。
ナースステーションに行くと、ご主人は写真を大切そうに手に持ちながら、穏やかな笑顔で私を見ていました。
「あなたに聞いてほしい話があるんです」
そう言われ、師長が用意してくれた別室でお話を聞くことになりました。業務の合間の短い時間でしたが、ご主人の真剣な眼差しに、大切な何かがあると感じたのです。
ご主人は、そっと写真を差し出しました。
そこには、若い頃のYさんが写っていました。
まるで女優さんのように美しく、カメラの向こうにいるご主人を愛おしそうに見つめています。
「素敵ですね」と私が言うと、ご主人は静かにこう話しました。
「昨日、あなたの私服姿を見かけました。オレンジのスカートが風に揺れていて……若い頃の妻にそっくりだったんです」
懐かしそうに写真を撫でながら話すご主人の姿に、私は思わず涙があふれました。
もう一度、綺麗な姿で
その後、私はYさんの病室へ向かいました。
「主人に捕まったんでしょう?」
Yさんはそう言って、いつものように笑いました。
ご主人から聞いた話を伝えると、Yさんは静かにこう言いました。
「若い頃、主人に会うときはいつもオレンジのスカートと白いブラウスだったの」
「主人、覚えていてくれたのね」
そう言って、Yさんは涙を流しながら微笑みました。
私は、その姿を見て思いました。
「このご夫婦に、もう一度思い出の時間を作ってほしい」と。
先輩たちに相談すると、「それは大切な看護ね」と協力してくれることになりました。
Yさんの希望は「もう一度、主人の前で綺麗でいたい」ということ。
私は整容ケアを勉強し、負担をかけない程度に髪を整えたり身だしなみを整えたりしました。
そして、Yさんが鏡を見たとき、
「あぁ、綺麗になったね」
とご夫婦は涙を流して喜んでくれました。

