エンドロールまでブラックな皮肉
変態的なカメラワークと執拗にモチーフを重ねる編集、トリッキーな演出などこれぞパク・チャヌク!と言いたくなるような味わいに思わずにんまり。しかし、ラストで描かれるあれほどに手を汚した果てに迎えた冷たく孤独な結末がどうしても他人事のようには思えず、背筋がぞっとした。
彼が囚われている椅子取りゲームに、拒否権もないままに私も参加しているのだから。ああ、資本主義よ。オフビートなスラップスティックコメディはエンドロールまでブラックな皮肉たっぷり。
どこまでも過去に執着し続ける男たち
同じくAIの台頭によって仕事を失ったライバル役にはイ・ソンミン。その妻役にはヨム・ヘランとベテラン俳優たちの演技合戦も楽しい一作。しかし、未来を見据え判断の早い女性たちに対し、いつまでたっても過去に執着する男たちの滑稽さといったら。
彼らにとって仕事は生きる糧であると同時にアイデンティティにも多分にかかわっているということだろう。しかし、そこにこだわっている場合かね。ちなみに犬は無事です。
『しあわせな選択』
配給/キノフィルムズ TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開中 ©2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
<文/宇垣美里>
【宇垣美里】
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。

