私が一生忘れられない後悔は、定年を数年後に控えたころに起きた部下との出来事です。あのときの自分の判断を思い返すたび、胸の奥に重い感情が残ります。
気付いていた「違和感」と見過ごした日々
当時の私は、中小企業の管理職として多忙な日々を送っていました。「自分が倒れてはいけない」という思いから、仕事を最優先にする毎日でした。
そんな中、真面目で責任感が強い部下のAさんに、少しずつ変化が現れ始めました。以前は安定していた仕事ぶりに陰りが見え、明らかに元気がなく、ミスも増えていったのです。
私はその変化に気付いていました。しかし、「そのうち持ち直すだろう」と考え、あえて深く踏み込むことはしませんでした。
突然の退職と知った現実
それから数カ月後、Aさんは突然退職しました。後になって、Aさんが精神的な不調を抱え、長く苦しんでいたことを知りました。その事実を聞いたとき、「なぜあのとき声をかけなかったのか」という思いが頭から離れなくなりました。
ほんの少し時間をつくり、話を聞いていれば、何か違った結果になっていたのではないか……そう考えずにはいられませんでした。

