金属アレルギーがあるため、ひげ剃りを拒否したにもかかわらず、刑務所職員に無理やり剃られたなどとして、元受刑者の八木橋健太郎さん(40)が国を訴えた裁判の控訴審判決が4月15日、東京高裁であった。
中吉徹郎裁判長は、刑務所側の対応を違法と認定したうえで「精神的損害を軽視できない」として、慰謝料を一審の18万円から25万円に増額し、国に支払いを命じた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「ひげ剃り拒否→強制」は違法 本人訴訟で一部勝訴
八木橋さんは、約2億円相当の仮想通貨「ビットコイン」をだまし取ったとして警視庁に逮捕され、2019年9月に懲役7年の実刑判決を受けた。
金属アレルギーがある八木橋さんは、最初に収容された喜連川社会復帰促進センター(栃木県)で、電池式カミソリによるひげ剃りを拒否した。
しかし、職員に両腕を押さえつけられ、強制的にひげを剃られたうえ、拒否行為が施設のルールに反するとして懲罰を科されたという。
これを受けて、八木橋さんは2022年11月、本人訴訟で国を相手取り損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
一審の東京地裁(篠田賢治裁判長)は2025年5月14日、「刑事収容施設法が定める制止措置として合理的に必要な限度を超えるものであって、許容されるものではない」として、刑務所側の対応を違法と判断。懲罰についても違法とし、国に計18万円の支払いを命じた。
これに対し、八木橋さんは、認められなかった主張があるとして控訴していた。
●「恐怖感や屈辱感は想像に難くない」損害額を3万→10万円
控訴審では、カメラが設置された部屋に収容されたことや、裁判に出廷できなかった受刑者が期日の前までに提出していた文書を取り調べずに審理が行われたことなどの適法性も争われた。
東京高裁は、ひげ剃り強制と懲罰について、一審に続き違法と認定した。
ひげ剃り強制による精神的損害について、一審は「有形力の行使の程度が強度のものであったとまでは認められない」「実際に金属アレルギーの深刻な症状が生じたとまでは認められない」などとして、慰謝料を3万円と算出していた。
これに対して、東京高裁は「恐怖感や屈辱感は想像に難くない」「事後的にアレルギー症状が出ていたことがうかがわれる」と指摘し、慰謝料を10万円に増額した。
懲罰についての慰謝料は、一審と同じ15万円とし、計25万円の支払いを命じた。
一方で、カメラ室への収容などについては、「刑事施設の長の合理的な裁量的判断に委ねられている」などとして、請求を退けた。

