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「100%泣いちゃう」「寝かしつけ後に見ると危険」なCM 子育て世代を撃ち抜いた花王「メリット」CM戦略の裏側

椎名林檎さんの楽曲『ギブス』を子どもがカバー歌唱している、花王「メリット」のキャンペーンCMが、子育て世代を中心に「100%泣く」と大きな反響を呼んでいます。

2024年の春、エレファントカシマシの『今宵の月のように』を子どもの声で歌うBGMで、自転車の練習をする子どもと父の素朴なイラストのアニメーションCMが話題に。2025年は椎名林檎さんの『幸福論』を同じく子どもの声でカバーしたCMが流され、「こんな歌詞だったんだ」と、その“再解釈”に驚き涙する声がSNSに溢れました。

そして2026年3月に公開された新CMで流れるのは、椎名林檎さんの『ギブス』。60秒という長尺で、春夏秋冬の移ろう季節の中を手をつないで歩んでいく親子の時間が描かれています。

立ち上げ当初からこのプロジェクトに携わってきた、花王株式会社 ヘルスビューティーケア事業部門ヘアケア事業部の鈴木佑衣さんに、CMの背景や制作秘話を聞きました。

苦戦していたメリット「ブランドに一貫性がなくなってしまった」

<鈴木佑衣さん/花王株式会社 ヘルスビューティーケア事業部門ヘアケア事業部>

ーー椎名林檎さんの『ギブス』は恋愛の歌だと思っていましたが、CMにのせて聞いてみると歌詞が子どもへの愛情そのものだと思えたことに驚きました。
親子が手をつなぎ春夏秋冬を歩き続け、最後に子どもが親から手を離し、友達と手をつなぎ前を歩く。そんな子どもを見守る親ーーそこに「ぎゅっとしていてね」という子どもの歌声が乗り、卒業・卒園シーズンだけに涙なしでは見られませんでした。

鈴木佑衣さん(以下、鈴木) 話題にしていただきありがたいです。実は先日、私の子どもも卒園式があり、4月から新1年生になりました。

ーーこのCMがいちばん沁みる学年じゃないですか……! 家族向けシャンプーのCMで実写ではなくアニメーションを使い、親世代にとって懐かしい楽曲を子どもの声でカバーするという手法が画期的だと思うのですが、2024年にこのシリーズを開始した背景を教えてください。

鈴木 「メリット」の誕生は1970年で、昨年55周年を迎えたロングセラー商品です。しかし売り上げは2014年をピークに右肩下がりで、苦戦していました。ヘアケア市場のプレイヤーが増え、1本1500円のシャンプーも当たり前になり、あらためて「メリット」の価値を考え直す時期にありました。

発売当時は毎日洗髪する習慣がない時代で、消費者にとって「ふけ・かゆみ」の悩みが大きなトピックでした。そこでメリットは「ふけ・かゆみを防ぐシャンプー」として発売しました。
2001年には「弱酸性メリット」を発売し、CMに当時ご夫婦だったタレントさんを起用し「家族シャンプー」というテーマを掲げました。
そこから20年以上、“家族”を軸に歩んできたのですが、「ママのシャンプー」「エコ」「家族みんなですっきり爽やか」など、多方向のアプローチを経て、結果的にブランドの一貫性がなくなってしまったんです。

ーー消費者にとって「メリット」のイメージが定まらなくなってしまったのですね。

鈴木 調査の結果、「家族一緒に使える」というイメージが10年間の間で20~30%下がってしまったことがわかりました。そこで今一度、100年続くブランドを目指して「メリットを立て直そう」というフェーズであることを確認し、「家族シャンプー」から「家族愛シャンプー」としてブランドを立て直していくことになりました。

<「家族シャンプー」から「家族愛シャンプー」にリブランディング>

「家族愛を感じる瞬間」をホワイトボード一面に書いた

鈴木 そのために企画立案当時、クリエイティブチームには「いろいろなことをやるとこれまでのようにイメージに一貫性がなくなってしまうので、数年間同じ広告を流し、『これが流れたらメリットだ』と思っていただけるような広告を作りたい」というお願いをしました。

ーー実際、2024・2025・2026と「90年代の楽曲を子どもがカバー」「同じイラストレーターによる、親子の日常を切り取ったアニメーション」という点が共通していることで、印象に強く残ります。

鈴木 機能性を謳うのではなく、感情を揺さぶられるようなものを作りたいと思いました。機能性のニーズは時代によって変化していきますが、時代を超えても変わらない普遍的なブランド価値の構築を目指しているんです。
シャンプーって、子どもの頃は家族と同じものを使っていても、思春期になると自分の好きなものを選んで使いたい時期がありますよね。でも「小さい頃、使っていたな」という親近感から、大人になり家族ができたときに自然と戻ってきてもらえるような安心感のあるブランド、家族の人生に寄り添えるブランドでありたいと思っています。

<CMができる前に掲げたステートメント>

鈴木 「家族愛」って決して大袈裟なものではないですよね。たとえば親目線だと、子どもがひとりでちょっとそこまで行けるようになったこととか、苦手な物がなんとか食べられるようになったことなど、日常のふとした瞬間に成長を感じて、うれしさと切なさが同時に湧いてきますよね。
そもそもシャンプー自体、毎日のおふろで日常的に使うものですし、そうした日常の中の家族愛を描きたいという共通認識をベースに、制作を進めていきました。

ーータレントやモデルを起用せず、アニメーションのみでの構成も、かえって鮮烈な印象を受けます。日常の場面を切り取った交通広告のコピーもSNSを中心に大きな話題になりましたよね。

鈴木 もちろん従来通りタレントさんを起用した企画のご提案もありましたが、私自身心が動いたのがイラスト案でした。抽象的なイラストにすることで余白を感じ、見る人が自分を投影しやすくなるんですよね。それぞれの広告で同じ人物のように見えるかもしれませんが、一家族という想定ではなく、いろんな家族として描いています。
イラストやコピーでどのような場面を描くかは、まず社内で「どんな瞬間に家族愛を感じたか」というエピソードを出し合う時間がありました。ホワイトボード一面にバーッと書いていって……「子どもがスポーツに挑戦するのをうしろのベンチで見守っている」とか、「一緒に自転車の練習をして乗れるようになった」とか、本当にリアルな声がたくさん上がったことを覚えています。

配信元: マイナビ子育て

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