気持ちを伝えても受けとってもらえない
その日の夜、帰宅した義彦にそれとなく切り出してみました。
「ねえ、里奈さんの車の件なんだけど……。個人LINEでやり取りするのは控えてもらえないかな? 私、あんまりいい気分じゃなくて」
義彦は疲れ果てた顔で、夕食の箸を止めました。
「幸恵、気持ちはわかるけどさ。彼女も一人で大変なんだろうし、大切なお客さんなんだ。成約台数や整備の入庫数は俺の給料に直結するんだよ? 楓のためにも、今は稼がないと」
「それはわかるけど、でも……」
「仕事だよ、幸恵。割り切ってくれよ」
夫の正論に、私はそれ以上何も言えなくなりました。でも、里奈さんのあの含みのある笑顔が脳裏に焼き付いて離れません。これは本当に、ただの「仕事」なのでしょうか。
あとがき:「親切」という名の侵食
「仕事だから」「困っているから」――そんな正論で妻の違和感を封じ込める夫の姿に、胸がザワついた方も多いのではないでしょうか。里奈の言葉の端々に漂う「あなたの夫を自由にできる」という特権意識。それは純粋な助け合いではなく、明らかに幸恵さんの領域を土足で踏み荒らす行為です。家庭という聖域に、じわりと毒が回り始める不穏な幕開けに、思わず幸恵さんの肩を持ちたくなりますね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

