●実際の計算はもっと細かいのに注意
なお、この計算はあくまで簡略化したものです。
まず、退職金は全額が分与の対象になるわけではなく、婚姻期間に対応した部分だけが対象になるのが原則です。たとえば勤続30年・婚姻20年なら、対象額は「1700万円 × 20年 ÷ 30年 ≒ 1133万円」に縮小するため、計算結果も変わってきます。
また、オーバーローンの家を計算に含めず、退職金だけを分ける、などの別の計算方法もあり、裁判例でも扱いが分かれているようです。
どの計算方法を使うかで結果は変わりますし、どの計算方法を使うかも事案により変わりうるため、弁護士に相談して確認することをお勧めします。
●銀行との関係も忘れずに
もうひとつ見落とされがちな落とし穴があります。住宅ローンを借りている銀行との関係です。
ローンが残っている間は家に抵当権(銀行が優先的に回収できる権利)が設定されています。ローン完済前に勝手に名義変更すると、ローン契約に違反するおそれがあります。
本件は「ローン完済後に名義変更する」プランなので、この点は問題になりにくい形です。ただし、完済するまでの間に父の支払いが何らかの理由で滞った場合、銀行が抵当権を実行して家が競売にかけられるリスクはゼロではありません。
夫婦間の合意と銀行との契約は別の話です。必要に応じて銀行にも事前に相談しておきましょう。
家の時価をより正確に知りたい場合は、不動産業者の無料査定などを利用することも考えられます。大きなお金の問題ですので、弁護士に相談することも検討すると良いでしょう。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
(参考文献)
- 秋武憲一=岡健太郎編著『離婚調停・離婚訴訟 四訂版』(青林書院,2023)
- 松本哲泓『事例解説 離婚と財産分与』(青林書院,2024)

