糖尿病や心房細動などの疾患を抱える方は、そうでない方に比べて血管が詰まるリスクが高くなることが知られています。これらの疾患が血管にどのような影響を与えるのか、またリスクを低減するためにどのような管理が求められるのかについて、疾患ごとの特徴をふまえながら詳しくご説明します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
血管詰まりのリスクを高める疾患
特定の疾患を持つ方は、血管が詰まるリスクが健康な方と比較して高くなることが知られています。これらの疾患を適切に管理することで、血管の詰まりを予防し、合併症のリスクを低減することが可能です。
糖尿病と血管への影響
糖尿病では、高血糖状態が続くことで血管の内皮細胞が障害を受けます。血糖値が高いと、糖が血管壁のタンパク質と結合し、AGEs(終末糖化産物:糖とタンパク質が結びついて作られる物質で、体内に蓄積すると血管や組織の老化を促進すると考えられている)と呼ばれる物質が形成されます。AGEsは血管の弾力性を低下させ、動脈硬化を促進します。また、糖尿病では酸化ストレスが増加し、炎症反応が持続することで、プラークの不安定化や血栓形成が起こりやすくなります。糖尿病患者さんは、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが非糖尿病患者と比較して2〜4倍高いとされています。血糖コントロールの指標であるHbA1cを7.0%未満に保つことで、血管合併症のリスクを低減できることが報告されています。ただし、目標値は年齢や認知機能により個別に調整されます。
心房細動と脳梗塞のリスク
心房細動は、心臓の心房が不規則に細かく震える不整脈です。心房が正常に収縮しないため、心房内で血液が滞留し、血栓ができやすくなります。この血栓が血流に乗って脳の血管まで運ばれ、詰まることで脳梗塞を引き起こします。心房細動を持つ方は、持たない方と比較して脳梗塞のリスクが約5倍高いとされています。心房細動による脳梗塞は、比較的大きな血管が詰まることが多く、重症化しやすい傾向があります。そのため、心房細動と診断された方は、抗凝固薬による治療が推奨されることが多く、適切な管理によって脳梗塞のリスクを大幅に低減できます。
まとめ
血管の詰まりは、生活習慣や基礎疾患と深く関連しており、自覚症状が乏しいまま進行することが多い病態です。しかし、初期のサインを見逃さず、適切な食生活や運動習慣を取り入れ、定期的な検査を受けることで、予防や早期発見が可能です。胸痛や手足のしびれ、言語障害などの危険サインが現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。血管の健康は、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を防ぐための基盤となります。日々の小さな積み重ねが、将来の健康を守ることにつながります。気になる症状や検査結果がある方は、循環器内科や内科の専門医に相談し、適切な治療や生活指導を受けることをお勧めします。
参考文献
日本動脈硬化学会 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2025」
厚生労働省「循環器病対策」
日本循環器学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」
国立循環器病研究センター「病気について」
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改定2025)」

