血管の詰まりを予防するためには、継続できる日常習慣を地道に積み重ねることが重要です。適度な運動や十分な水分補給、食事のタイミングの工夫に加え、定期的な健診を通じて血管の状態を定期的に把握することも欠かせません。日常生活のなかで取り入れやすい予防策と検査の種類についてご紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
血管詰まりを防ぐ日常生活の工夫と定期検診
血管の詰まりを予防するためには、日常生活の中で具体的な対策を実践することが重要です。継続可能な習慣を身につけることで、長期的な血管の健康維持につながります。ここでは、日常生活で取り入れやすい予防法について説明します。
適度な運動習慣の確立
定期的な運動は、血管の柔軟性を保ち、血流を改善する効果があります。有酸素運動は、心肺機能を高め、HDLコレステロールを増加させ、血圧を低下させることが知られています。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、自分の体力や好みに合った運動を週に3〜5回、1回あたり30分以上行うことが推奨されています。運動を始める際は、急激な負荷をかけずに、徐々に運動量を増やしていくことが大切です。また、筋力トレーニングを週に2回程度取り入れることで、基礎代謝が向上し、体重管理にも役立ちます。日常生活では、エレベーターの代わりに階段を使う、通勤時に一駅分歩く、家事を積極的に行うなど、身体活動量を増やす工夫が効果的です。
水分補給と食事のタイミング
十分な水分補給は、血液の粘度を下げ、血栓の形成を予防する効果があります。特に、睡眠中や運動時は脱水状態になりやすいため、起床時や就寝前、運動前後にコップ1杯程度の水を飲むことが推奨されます。1日あたり1.5〜2リットル程度の水分摂取を心がけることが望ましいでしょう。ただし、心臓や腎臓に疾患がある方は、主治医に相談のうえ、適切な水分量を確認することが重要です。また、食事のタイミングも血管の健康に影響します。就寝直前の食事や夜間の間食は、血糖値や中性脂肪の上昇を招きやすいため、夕食は就寝の3時間前までに済ませることが理想的です。朝食を抜くと、昼食後の血糖値が急激に上昇しやすくなるため、1日3食を規則正しく摂取することが大切です。
血管の健康を守るための定期検査
血管の詰まりを早期に発見し、適切に対処するためには、定期的な健康診断や検査を受けることが不可欠です。無症状のうちから動脈硬化や血管の異常を把握することで、予防的な治療や生活習慣の改善に取り組むことができます。
血液検査と血圧測定
年に1回以上の健康診断では、血液検査によってLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、血糖値などを確認することが重要です。LDLコレステロールが140mg/dL以上、中性脂肪が150mg/dL以上の場合は、脂質異常症と診断されることがあります。また、空腹時血糖値が126mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上の場合は、糖尿病の可能性が考えられます。血圧は、家庭での定期的な測定が推奨されます。診察室での測定では緊張によって血圧が上昇することがあるため、家庭血圧の方がより正確に日常の血圧状態を反映します。収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上が続く場合は、高血圧と診断されることがあります。
画像検査による血管の評価
動脈硬化の進行度や血管の狭窄の程度を評価するために、画像検査が行われることがあります。頸動脈エコー検査では、首の血管(頸動脈)の壁の厚さやプラークの有無を観察できます。血管壁の厚さ(IMT)が1.1mm以上の場合、動脈硬化が進行していると判断されることが一般的です。冠動脈CTや心臓カテーテル検査では、心臓の血管の狭窄や石灰化の程度を詳しく調べることができます。これらの検査は、胸痛などの症状がある方や、複数の危険因子を持つ方に対して実施されることが多いです。また、足の血管の詰まりが疑われる場合は、ABI(足関節上腕血圧比)検査が行われ、0.9未満の場合は末梢動脈疾患の可能性が考えられます。
まとめ
血管の詰まりは、生活習慣や基礎疾患と深く関連しており、自覚症状が乏しいまま進行することが多い病態です。しかし、初期のサインを見逃さず、適切な食生活や運動習慣を取り入れ、定期的な検査を受けることで、予防や早期発見が可能です。胸痛や手足のしびれ、言語障害などの危険サインが現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。血管の健康は、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を防ぐための基盤となります。日々の小さな積み重ねが、将来の健康を守ることにつながります。気になる症状や検査結果がある方は、循環器内科や内科の専門医に相談し、適切な治療や生活指導を受けることをお勧めします。
参考文献
日本動脈硬化学会 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2025」
厚生労働省「循環器病対策」
日本循環器学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」
国立循環器病研究センター「病気について」
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改定2025)」

