風邪の治療に抗生物質は不要? 薬を飲むよりも優先すべき「基本の対処法」

風邪の治療に抗生物質は不要? 薬を飲むよりも優先すべき「基本の対処法」

風邪で受診した際に抗生物質を処方される場面は、医療現場でも少なくありません。本章では、なぜ医学的に不適切な処方が行われてしまうのか、患者さん側・医療提供者側それぞれの背景を整理しながら、風邪に対する適切な治療の考え方についてご説明します。正しい知識を持つことが、薬剤耐性菌の拡大防止にもつながります。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

風邪症状での抗生物質処方の実態

医療現場では、風邪症状で受診した患者さんに抗生物質が処方されるケースが少なくありません。しかし、その多くは医学的に不適切な処方であり、世界的にも問題視されています。

不適切な処方が行われる背景

風邪に対する抗生物質の不適切な処方には、いくつかの背景があります。患者さん側の要因としては、「薬をもらわないと治らない」という誤った認識や、早く症状を改善したいという期待から抗生物質を求める傾向があります。一方、医療提供者側の要因としては、患者さんの期待に応えようとする心理、細菌感染との鑑別が困難な場合の予防的投与、診療時間の制約によるコミュニケーション不足などが挙げられます。また、一部の医療機関では患者さんの満足度を重視するあまり、医学的適応がなくても抗生物質を処方してしまうケースがあるのも事実です。こうした不適切な処方は、薬剤耐性菌の増加という深刻な公衆衛生上の問題を引き起こしています。

適切な風邪の治療法

風邪の治療は対症療法が基本となります。十分な休養と水分補給を心がけ、症状に応じて解熱鎮痛薬や咳止め、鼻水を抑える薬などを使用します。発熱は体の防御反応であり、38度程度までは解熱剤を使わず様子を見ることも選択肢の一つです。のど飴や温かい飲み物で喉の痛みを和らげ、加湿器を使って室内の湿度を保つことも効果的でしょう。通常、風邪の症状は1週間から10日程度で自然に改善していきます。ただし、高熱が3日以上続く場合、呼吸困難や胸痛がある場合、意識状態に異常がある場合などは、細菌感染や他の重篤な疾患の可能性があるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。こうした症状がなければ、無理に抗生物質を求めず、体を休めることが回復への近道です。

まとめ

抗生物質は細菌感染症の治療に不可欠な医薬品ですが、風邪などのウイルス性疾患には効果がなく、不適切な使用は腸内細菌叢を乱し、薬剤耐性菌を生み出す原因となります。処方された抗生物質は指示通りに最後まで飲みきり、残薬を自己判断で使用しないことが重要です。症状や疑問があれば医師や薬剤師に相談し、抗生物質の適正使用を心がけることで、自分自身の健康と将来世代のために有効な治療手段を守ることができます。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診し、専門家の診断を受けることをおすすめします。

参考文献

厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」

国立感染症研究所「薬剤耐性菌感染症」

日本化学療法学会「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」

配信元: Medical DOC

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