麻疹は子どもの病気という認識が強いものの、近年は成人の感染例が増加しています。本章では予防接種制度の変遷や免疫低下といった背景を踏まえ、大人が感染するリスクを解説します。さらに重症化や合併症の危険性にも触れ、成人こそ注意すべき理由を明確にします。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
大人が麻疹にかかるリスクと背景
麻疹は子どもの病気というイメージが強いですが、近年は成人の患者さんも増加傾向にあります。大人が麻疹にかかる背景には、予防接種制度の変遷や免疫の減衰など、さまざまな要因が関係しています。
世代による予防接種歴の違い
日本における麻疹の予防接種制度は、時代とともに変化してきました。1978年から定期接種が始まりましたが、当初は1回のみの接種でした。その後、2006年から2回接種制度が導入され、現在では1歳時と小学校入学前の2回接種が標準となっています。
このため、生まれた年代によって接種回数や接種機会が異なり、免疫の獲得状況にも差があります。平成12年4月2日以降に生まれた方は、定期接種として2回の麻しん含有ワクチンを受ける機会があります。一方、それ以前に生まれた方は、1回のみの接種機会だった、もしくは定期接種の機会がなかった世代が含まれます。
成人における麻疹の重症化リスク
大人が麻疹にかかった場合、子どもに比べて症状が重くなる傾向があります。高熱が長く続き、肺炎や中耳炎などの合併症を起こしやすいことが報告されています。特に肺炎は成人麻疹の代表的な合併症で、入院が必要となるケースも少なくありません。
また、妊娠中の女性が麻疹にかかると、流産や早産のリスクが高まることが知られています。胎児への直接的な影響として、先天性の障害を引き起こすことは少ないとされていますが、母体の重症化が妊娠経過に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、妊娠を考えている方は、事前に麻疹の免疫があるかを確認し、必要であれば予防接種を受けることが推奨されます。ただし、妊娠中は生ワクチンである麻疹ワクチンの接種ができないため、妊娠前の対策が重要です。
まとめ
麻疹は感染力が非常に強く、予防接種を受けていない方が感染すると重症化するリスクもあります。初期症状を見逃さず、早期に医療機関に相談することが大切です。また、予防接種によって免疫を獲得することが、自分自身を守るだけでなく、周囲の方々への感染拡大を防ぐことにもつながります。免疫の有無が不明な場合は、抗体検査や予防接種について、かかりつけ医や専門医に相談されることをおすすめします。日頃から健康管理に気を配り、適切な予防策を実践することで、麻疹から身を守ることができるでしょう。
参考文献
国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「麻しん」
厚生労働省「麻しん」

