だがそんな中にも、画面上にさわやかな風を吹き込む存在がいる。見上演じる主人公・一ノ瀬りんの幼なじみである竹内虎太郎だ。演じるのは、連続テレビ小説初出演となる小林虎之介。ジンとくる演技によって、本作が小林虎之介の大ブレイク作となるのか?“イケメン研究家”加賀谷健が解説する。
この春、誰もが小林虎之介にときめく
連続テレビ小説を見ていて、朝の風をこれほど心地よく感じさせる俳優は久しぶりではないか。『風、薫る』というタイトルも相まって、この春、誰もが小林虎之介にときめくことになりそうだ。小林が演じる役名に「虎」の一文字が含まれていることも後押しするだろう。本作の物語は、江戸から明治に時代が変わった、文明開化の真っ只中で幕開ける。第1週第1回序盤、画面上にはのどかな農地が広がる。主人公・一ノ瀬りん(見上愛)は元家老の娘だが、今は農作業に従事している。農民の息子・竹内虎太郎(小林虎之介)は幼なじみだ。
農作業で汗を流す虎太郎が、ふと鍬で耕す手をとめ、隣の畑で作業するりんの方へ視線を遣る場面が素晴らしい。少ないカット数なのに、二人が両想いであることが一発でわかる。カット間を流れるオーボエの牧歌的メロディが、小林の演技と見事に調和している。
心に直接訴えかけてくる演技
この投稿をInstagramで見る
小林の演技は一見、素朴だが、不思議とジンとくるものがある。第2週第7回にいい表情がある。両想いなのにお互いなかなか気持ちを伝えきれず、嫁いでしまったりんの披露宴場面と、虎太郎がぽつんと川辺で釣りをする場面が平行して描かれる。
カメラは虎太郎に寄り、ロケ地である鬼怒川の水流を見つめ、少し寂しそうな横顔を約8秒間じっくり映す。何だかジンとくる。もっとジンとくる場面がある。第9回、りんを嫁ぎ先から東京に逃がしてやる夜の場面だ。
街道には追っ手がいる。機転を利かせた虎太郎は、渡し守に頼んでりんと彼女の幼い娘を小舟に乗せる。
なんとか出発できた小舟を見送る彼が「りーん、俺ぇ……」と言いかける。でも言わない。虎太郎は大きく手を振り、全身でエールを送る。小林虎之助の演技は、見る者の心に直接訴えかけてくる。

