高齢の方が高齢の方の世話を担う老老介護が深刻な社会問題となっています。体力的および精神的な負担が重く、共倒れによって生活が破綻するリスクを伴うためです。
本記事では、老老介護が発生する背景や、直面しやすい課題を整理します。そのうえで、活用すべき公的な支援制度や民間サービス、家庭で実践できる具体的な工夫を提示します。
平穏な暮らしを継続するための情報を、専門的な視点からわかりやすく解説しました。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
老老介護が増えている原因や問題点

老老介護とはどういった状態ですか?
老老介護とは、65歳以上の高齢の方が、同じく65歳以上の高齢の方を介護する状況を指します。具体的には、高齢の夫婦間や、高齢の子がさらに高齢の親を世話するケースが該当します。厚生労働省の調査によれば、在宅介護世帯の6割以上が老老介護の状況です。加齢により体力が低下した者が作業を担うため、家事や移動などの生活全般に強い負荷がかかります。双方の健康状態が不安定になりやすく、日常生活の継続が困難になる傾向があります。共倒れを防ぐには、早期に周囲の支援を得る体制を整えなければなりません。この状態が長期化すると、介護者側の持病が悪化する恐れも生じます。孤立を防ぎ、社会的な接点を保つことが、暮らしを維持するポイントです。
老老介護が増えている原因を教えてください。
主な要因は、平均寿命の延伸による高齢の方の人口増加です。医学の進歩で長寿化が進み、介護を必要とする期間も延びています。また、核家族化の進行により、子世代と同居しない世帯が増えました。かつてのように多世代で支え合う環境が失われ、夫婦のみで完結せざるを得ない構造が定着しています。さらに、社会保障費の抑制を背景とした在宅ケアへの移行も影響しています。これらの要素が重なり、家庭内での高齢の方同士の支え合いが常態化しました。さらに、都市部へ人口が集まることで地域の近所付き合いが減り、周囲の助けを得にくい孤立した環境が生まれています。こうした複合的な理由により、高齢の方が介護の主役を担わざるを得ない現実があります。社会構造の変化が、家庭への負担を増大させているのでしょう。
老老介護の問題点を教えてください。
深刻な課題は、介護者の身体的および精神的な疲弊です。腰痛や睡眠不足などの健康被害が生じやすく、強いストレスからふさぎ込む例も少なくありません。また、急病時に誰も助けを呼べない緊急事態の危険性が常に付きまといます。経済的な困窮や、社会からの遮断による情報の不足も切実な悩みです。介護者が適切な休息を取れないため、生活の質が著しく低下するリスクを否定できません。限界を迎える前に、外部の支援を取り入れる仕組み作りが不可欠です。夜間の対応が必要な場合、介護者の休養時間はさらに削られます。状況が深刻になる前に、専門家による介入が欠かせません。一人の力ですべてを完結させようとせず、周囲の支援を取り入れる姿勢が重要です。
老老介護と認認介護の違いは何ですか?
認認介護は、介護者と被介護者の双方が認知症を患っている状況を指します。老老介護のなかでも、特に事故の可能性が高い深刻な形態と位置付けられます。判断能力が低下しているため、薬の服用管理や火の不始末などのトラブルが起きやすいでしょう。また、自身の症状を客観的に認識できず、支援を拒むケースも目立ちます。周囲が異変に気付いたときには、すでに生活が破綻している場合も少なくありません。老老介護以上に、行政や医療機関による密接な介入が求められます。意思疎通が困難になることで、家庭内の問題が表面化しにくい点も特徴です。栄養バランスの偏りや、金銭管理のミスから生じる二次的な弊害も懸念されます。早期発見のために、地域による定期的な見守り活動が有効な対策です。
老老介護を支援する公共サービス

老老介護を支援する公共のサービスはどのようなものがありますか?
まずはお住まいの市区町村の窓口で、要介護認定の申請を行いましょう。申請後、調査員による訪問調査と主治医の意見書をもとに審査が実施されます。認定結果が通知されたら、ケアマネジャーを選定してケアプランを作成します。この計画に沿って、具体的な支援内容や利用頻度を決定する運びです。急ぎの場合は、暫定プランを作成して手続き中からサービスを先行利用できる場合もあります。不明な点は、地域の相談専門機関の地域包括支援センターがサポートします。本人や家族の意向を反映させながら、無理のない範囲で予定を組むことが大切です。認定結果が出るまでには通常30日程度の時間を必要とします。その間の生活に不安があるなら、早めに相談員へ具体的な助言を求めましょう。
介護施設には誰でも入所できますか?
施設の種類により、入所条件や基準が異なっています。公的な特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の方が入所対象です。ただし、認知症の程度や家族の状況により特例で認められる場合もあります。一方で、介護老人保健施設はリハビリテーションを目的としており、在宅復帰を目指します。入居待ちが発生している施設も少なくないため、早めの情報収集が重要です。本人の心身状態や経済状況、家族の希望に合致する施設を慎重に検討しましょう。ケアマネジャーから、空き状況や利用者の評価などの情報の収集も有効です。施設見学を行い、実際の雰囲気や職員の対応を確かめることが大切でしょう。入所にあたっては、医療的ケアの必要性なども審査の重要な判断材料です。
公的な支援を受けるためにはどれくらいの費用がかかりますか?
介護保険サービスの自己負担は、原則として費用の1割を支払います。所得が高い場合は、2割または3割負担となる仕組みです。施設入所の場合は、サービス費に加えて食費や居住費が別途必要です。特別養護老人ホームでは、月額100,000円〜150,000円程度が一般的な目安となるでしょう。ただし、低所得者向けには負担を軽減する補足給付などの制度があります。医療費との合算で負担額を抑える高額介護サービス費制度も存在するため、窓口で試算を依頼しましょう。住民税非課税世帯であれば、居住費などが大幅に減額されるかもしれません。具体的な月額費用は、ケアプラン作成時に説明を受けられます。

