モデルで女優、三吉彩花(29)が20日、インスタグラムで背中から腰にかけてあしらわれた大きな「青い花」のタトゥーを公表した。連日メディアで賛否両論が巻き起こる中、ネット上で最も多く飛び交っているのが「女優として役柄が狭まるのでは」「もったいない」という懸念の声だ。しかし、最新のAI・CG技術が当たり前となった現代のエンタメ業界において、実はその心配は「過去のもの」になりつつあるのをご存知だろうか。表面的な賛否の声から一歩踏み込み、テクノロジーが変えた俳優業のリアルと、いまだアナログな「ダブルスタンダード」を抱えるスポーツ界の現状から、日本社会とタトゥーの“現在地”を紐解く。
30歳を前にした「時間をかけた確信」
6月18日に30歳の節目を迎える三吉。インスタグラムの投稿では、英語で「人生を経験する中で、本当に重要なのは、誰かに『なぜ』と聞かれたときに、自分の言葉で明確に説明できるかどうかだと思う」と自身の信念をつづり、「これは衝動ではなく、私が時間をかけた確信です」と強い意志を表明した。
続けて、幼少期の経験から学んだ忍耐や感情を背景に、30歳という人生の新章を目前にしたタイミングで「刺青が浮かんだ」と経緯を説明。それは「自分に忠実に生きる決意の証」であると強調した。背中に刻まれた青い花のデザインは、単なる美しさだけでなく、これまでの歩みや内なる想いが込められたものであるという。
「役柄が狭まる」は杞憂。AI・CGで完結する現代の映像制作
この公表を受け、様々なメディアが三吉のタトゥーについて報道。ネット上では意見が真っ二つに割れている。
【好意的な声】
美しすぎる。1つのアート作品みたい
自分らしさを貫く姿勢がかっこいい!
海外の女優みたいで素敵
【懸念や否定的な声】
綺麗な肌だったのに、もったいない
ないほうが素敵だと思う
日本のドラマやCMなど、役柄が狭まるのでは?
否定的な意見の中で特に目立つのが、前述した「役柄への影響」を危惧する声だ。しかし、現代の映像制作現場において、その心配は杞憂と言っていい。
高性能なファンデーションや特殊メイクの技術向上はもちろんのこと、現在ではAIやCG技術を駆使すれば、映像上のタトゥーを跡形もなく自然に消すことは極めて容易になっている。もはや「タトゥーがあるからこの役はできない」という物理的な制約が、俳優のキャリアを直接的に狭める可能性は極めて低いのが実情だ。
そう考えると、「仕事への影響」を案じる声の根底には、「美しい素肌のままでいてほしかった」「個人的にはタトゥーを入れてほしくなかった」という、ファンゆえの素直な願望が隠れているとも推測できる。心配というオブラートに包み、無意識のうちに「タトゥーを否定する正当な理由」として仕事への影響を挙げてしまうのも、見られることを生業とする“イメージ商売”の難しさだろう。
映像でカバーできないスポーツ界の「タトゥー問題」
一方で、撮影後にAIやCGでいかようにでも処理できる映像作品とは異なり、肉体を激しくぶつけ合うスポーツ界では、タトゥー問題はより現実的で複雑な様相を呈している。
その象徴とも言えるのが、プロボクシングにおける「井岡一翔のタトゥー騒動」だ。日本ボクシングコミッション(JBC)はルールにより、原則として入れ墨などがあるボクサーの試合出場を禁じている。
発端となったのは2020年大晦日の世界戦(田中恒成戦)。井岡は左腕のタトゥーをファンデーション等で隠さずにリングに上がり、これがルール違反に問われ、翌月にJBCから厳重注意処分を受けた。現在、井岡は試合のたびにファンデーションを塗るなどしてタトゥーを隠す対応を続けている。しかし、激しく動くボクシングにおいて、大量の汗や対戦相手との摩擦でメイクが落ちてしまうリスクは常に付きまとう。スポーツ競技においては「単にメイクで隠せば根本的に解決する」という単純な話ではないのだ。
さらにこの騒動で最も議論を呼んだのが、国内選手と外国人選手との間に生じる「ダブルスタンダード」だ。日本のリングであっても、外国人選手に対しては事実上タトゥーの露出が容認されているケースが多い。対戦相手の外国人選手がタトゥーを見せたまま戦う横で、日本選手にのみ厳格なルールを適用する矛盾した対応には、ファンや関係者からも「グローバルスタンダードに合わせるべき」「ルール自体が時代遅れだ」との厳しい指摘が相次いだ。
しかし、同時に考えるべきは、「時代遅れ」と厳しい批判を浴びながらも、JBCのこうした規定がいまだに撤廃されず残っているという事実そのものである。それは裏を返せば、日本社会の根底に今もなおタトゥーに対する強い「忌避感」が根強く横たわっていることを如実に示していると言えるだろう。
変わる技術と、変わらない覚悟
タトゥーを巡る環境は、AIで瞬時に消せる俳優業と、アナログな対応を迫られるスポーツ界とで全く異なるフェーズにある。しかし、日本社会の根強い忌避感はいまだ健在だ。
三吉は今回の公表にあたり、賛否が出ることを分かった上で、所属事務所と2~3年という長い時間をかけて話し合ってきたという。つまり、三吉と所属事務所の間では「タトゥーがあるからこの役はできない」という物理的な制約は、現代のAIやCGなどで十分カバーできるという結論が出ているものとみられる。決して衝動的なものではなく、社会の現状や映像業界の進化を見据えた上での冷静な決断なのだ。
30歳を前に三吉彩花が背中に刻んだ「青い花」。それは彼女個人の力強い決意の証であると同時に、変わりゆくテクノロジーと変わらない日本社会の価値観の中で、「自己表現の現在地」を問いかける一石となっている。

