急性すい炎と胃痛の鑑別には、血液検査や画像検査といった医療機関での検査が欠かせません。どのような検査が行われ、それぞれの疾患でどのような結果が得られるのかを理解しておくことが重要です。このセクションでは、診断に用いられる検査の種類と、診断における注意点について解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
診断方法と検査の違い
急性すい炎と胃痛を鑑別するためには、医療機関での適切な診断と検査が必要です。それぞれの疾患に特徴的な検査所見を理解しておくことが重要です。
血液検査での違い
血液検査は、急性すい炎の診断において重要な役割を果たします。急性すい炎では、すい臓から分泌される消化酵素であるアミラーゼやリパーゼの血中濃度が著明に上昇します。通常、正常値の3倍以上の上昇が診断の基準とされています。また、炎症反応を示すCRP(C反応性たんぱく)や白血球数も上昇することが一般的です。重症例では、肝機能や腎機能の異常、電解質のバランスの乱れが見られることもあります。一方、急性胃炎では、これらの酵素の上昇は見られません。貧血や炎症反応の軽度の上昇が見られることはありますが、急性すい炎ほど顕著ではありません。血液検査の結果は、診断の決め手となることが多く、症状がある場合には早期に検査を受けることが推奨されます。
画像検査での違い
画像検査も、急性すい炎と胃痛の鑑別に有用です。腹部超音波検査やCT検査では、急性すい炎の場合、すい臓の腫大や周囲の炎症、体液の貯留などが観察されます。CT検査は、炎症の程度や合併症の有無を評価するために特に有用です。重症度の評価や予後予測にも用いられます。一方、胃炎や胃潰瘍の診断には、内視鏡検査(胃カメラ)が最も有効です。内視鏡検査により、胃の粘膜の状態を直接観察でき、炎症や潰瘍の有無、範囲を正確に評価できます。また、必要に応じて組織を採取し、悪性の病変がないかを確認することもできます。症状や血液検査の結果に応じて、適切な画像検査が選択されます。医師の判断に従い、必要な検査を受けることが重要です。
診断における注意点
急性すい炎と胃痛の診断においては、いくつかの注意点があります。症状だけで両者を完全に区別することは困難な場合があり、詳細な問診と検査が必要です。また、急性すい炎と胃潰瘍が同時に存在することもあり、特にアルコール摂取が多い方では注意が必要です。さらに、初期の段階では血液検査の異常が軽微な場合もあり、時間を置いて再検査することが必要なこともあります。症状の経過を注意深く観察し、悪化の兆候がないかを確認することが重要です。自己判断で症状を放置せず、医療機関を受診して適切な診断を受けることが、重症化を防ぐために不可欠です。特に、激しい痛みが持続する場合や、発熱や嘔吐を伴う場合には、速やかに受診することが推奨されます。
まとめ
急性すい炎は、早期発見と適切な治療により予後が大きく改善される疾患です。初期症状である上腹部痛や背中の痛みを見逃さず、胃痛との違いを理解して、迅速に医療機関を受診することが重要です。特に、アルコールの過剰摂取や胆石などのリスク要因がある方は、症状に注意を払い、定期的な健診を受けることが予防につながります。痛みが強い場合や随伴症状がある場合には、躊躇せず医療機関に相談することをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性膵炎(薬剤性膵炎)」
日本膵臓学会「急性膵炎診療ガイドライン2021」
日本膵臓学会「急性膵炎」

