男性が選択できる避妊法の一つとして知られるパイプカット(精管結紮術/せいかんけっさくじゅつ)について、「どのような手術なのか」「誰でも受けられるのか」疑問を持つ人も少なくありません。そこで手術の流れや方法、受けられないケースについて、医師の木戸雅人先生(木戸クリニック)に解説してもらいました。
※2026年2月取材。

監修医師:
木戸 雅人(木戸クリニック)
東京慈恵会医科大学卒業、獨協医科大学大学院医学研究科修了。その後、東京慈恵会医科大学、東急病院などで泌尿器科医として経験を積む。2018年、埼玉県所沢市に位置する「木戸クリニック」の院長に就任。 医学博士。日本泌尿器科学会専門医。
手術の基本的な流れ
編集部
パイプカットとはどのような手術ですか?
木戸先生
パイプカットは、避妊を目的に陰嚢(いんのう)内にある精管を確認し、結紮(けっさつ/精管を縛り、切断して精子の放出を物理的に防ぐ)・切断する手術です。精子が通る管を切断し、精子が出てこない状態にするため、避妊効果が期待できます。欧米では以前から広く行われており、日本でもここ1~2年で大幅に増えてきている印象です。
編集部
パイプカットを受けるには入院する必要があるのでしょうか?
木戸先生
局所麻酔下で行うため、入院は原則不要であり、日帰りで受けられるケースがほとんどです。従来法では小さな切開を2カ所に行い、精管を処理します(縫合が必要な場合もあります)。一方で、切開を伴わない方法もあるため、事前に医療機関のHPなどで確認をおすすめします。
編集部
痛みが心配なのですが。
木戸先生
麻酔を使用するため、手術中の痛みは抑えられます。麻酔の方法も、従来法では皮膚や精管周囲に針で麻酔薬を注入していますが、針を刺さない特殊な麻酔方法を取り入れている医療機関もあります。
編集部
パイプカットを受けるときの注意点はありますか?
木戸先生
ほとんどの場合は日帰りで済む手術ですが、術後当日は安静を保ち、激しい運動や飲酒など血行を促進する行為は控えてもらいます。それ以降は、一般的に普段通りの生活を送れます。なかには数日間違和感が続く人もいますが、多くの場合は軽度かつ一時的であり、通常の生活にも比較的早く戻ることができます。
パイプカット手術は誰でも受けられるわけではない
編集部
パイプカットの手術は誰でも受けられるのですか?
木戸先生
基本的には、健康状態が安定している人であれば対象となりますが、すべての人が無条件で受けられるわけではありません。事前の問診と診察で、医師が適応を慎重に判断します。また、手術を受ける側も、手術についてしっかりと理解しておく必要があります。
編集部
具体的に受けられない場合を教えてもらえますか?
木戸先生
例えば、抗凝固薬や抗血小板薬といった血液を固まりにくくする薬を内服している人、もともと血液が止まりにくい病気がある人は、手術による出血リスクが高いため、慎重な判断が必要です。また、過去に局所麻酔でアレルギー症状が出た経験がある人も注意が必要です。
編集部
ほかに注意が必要なケースはありますか?
木戸先生
体内や体表に金属が埋め込まれている人や、広範囲の入れ墨がある人は、手術を受けられない場合があります。また、過去に精巣や鼠径(そけい)ヘルニアなどの手術歴がある人、精巣上体炎などの感染歴がある人も事前に確認が重要です。
編集部
肥満も注意が必要だと聞いたことがあります。
木戸先生
軽度〜中等度の肥満であっても、陰嚢の形状に異常がなければ支障のないケースがほとんどです。しかし、高度な肥満の場合、程度によっては手術できない可能性もあるため、事前に医療機関で確認してください。

