この空気こそ「新しい戦前」
皮肉なことに、それはタモリ自身が指摘した「新しい戦前」をもっとも鮮明に映し出しています。もちろん、具体的な戦争に踏み込んでいった情勢と、ちんけなネット炎上とでは大きな差があるのは確かです。しかしながら、漠然とした空気によって言論の自主規制がまかり通っている点では通じるものがあるのではないか。「タモリさんって、全然面白くない」とぶっこんだためにボコボコにされたヒカルこそが、タモリの危惧した浅はかに加熱する社会を浮き彫りにしてしまったからです。
今回、ヒカルと梶原が炎上した背景には、“私たちの愛するタモリが不当に傷つけられた”という多くの人の思いがあります。ある種の正義感に基づいたリアクションだと言えるでしょう。
あの当時の「戦前」にも、そんな反動的なパワーが漂っていたのかもしれません。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

