医療従事者への願い、「小児膠原病」を見逃さないでほしい
編集部
現在の体調や生活について教えてください。
矢吹さん
服薬は朝晩2回です。朝はステロイド(4mg)、免疫抑制剤のミコフェノール酸モフェチル、ベラプロストナトリウム、鉄剤を服用しています。週1回、関節炎のためにメトトレキサートの注射剤も打っています。夜はミコフェノール酸モフェチルとベラプロストナトリウムです。研究をするようになってから昼は不規則なので、昼に服用しなくていい薬をリクエストしています。2025年9月にステロイドの影響で眼圧が上がってからは、寝る前に眼圧を下げる目薬を点眼しています。ステロイドも眼圧上昇を受けて5mgから4mgに減量しましたが、やはり身体に負担があり、生物学的製剤(生物が作り出す物質を応用し、炎症の原因をピンポイントで抑える薬)の点滴を導入しました。仕事は通院や作業内容など、合理的配慮を受けながら楽しく取り組んでいます。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
矢吹さん
私も医療従事者の端くれなので、「まさかないと思っていた」病気に遭遇することがあります。そうした疾患はまれな上、年に1回あるかないかの頻度なので、つい見逃してしまいそうになります。特に小児膠原病は患者数が少なく、診断に至るまでが非常に難しい病気です。膠原病は不定愁訴(原因がはっきりしない、さまざまな体の不調)のような症状が多いことも、診断を難しくしているのかもしれません。疑いがある患者さんたちを見落とさないよう、ぜひ注意を払ってもらいたいと思います。まずは「子どもでも膠原病にかかる」という事実を知り、診療の中で意識してもらえたらうれしいですね。また、私は主治医と相談し、「100%の完治」を目指すのではなく、自分のキャリアや生活を考慮した治療のゴールを設計することで、充実した日々を送ることができています。ただ薬を増やすのではなく、患者さんの生活観や人生観と向き合った治療戦略を立ててもらえたらと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
矢吹さん
子どもや若い人の膠原病は珍しく、先が長い分、生存率などの統計も不十分です。保護者にとっても不安は尽きないと思います。でも、病気によって新たな道が開けたと思える部分や、広がった世界もあります。新しい世界との関わりを楽しみながら、自分の気持ちを大切にして、長く病気と付き合っていってほしいと思います。小児膠原病は今のところ、人生を通して付き合っていく病気です。初めは小児科や小児の膠原病を専門とする医師に診てもらうと思いますが、いずれ大人の診療科に移る時が来ます。その際には自分で治療法を選択する力だけでなく、通院や社会資源の受給を継続する力、何より「病気と共存しながら人生をデザインする力」が求められます。この力は、さまざまなことに挑戦し、医療従事者とも主体的にコミュニケーションを取ることで身に付いてきます。また、病気の子どもたちを対象とした心理・社会学的な研究成果から、分かっていることがあります。それは、幼少期は自身が病気であるという自覚が乏しい場合があることや、他人と違うことをしたくないという気持ちから、治療に前向きになれず内服を拒否する時期があるということです。この問題に対しては、ある程度大きくなってから取り組める「振り返りビーズ(闘病中の子どもたちが、つらい検査や治療を乗り越えた証しとしてビーズを集める心理支援プログラム)」もあります。しかし、どんなプログラムよりも日常生活での成功体験ほど、家族の絆を強くしてくれるものはありません。まずは病気が自分の全てになってしまわない人生設計、子育てをしてもらえたらと思っています。
編集後記
矢吹さんの体験は、病気の早期発見の重要性と、病と共に生きる覚悟、そして支え合う社会の大切さを私たちに教えてくれます。小児膠原病という希少疾患の診断の難しさや、治療と生活の両立の苦労、そしてその中で見出した生きがいや希望。医療従事者としての視点から語られるメッセージは、患者さんと医療の関係性に新たな視座を与えてくれます。「健康はお金で買えない」――この言葉の重みを、私たちは今一度胸に刻むべきかもしれません。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。
記事監修医師:
田島 実紅(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

