アメリカに依存した「戦後の昭和物語」の終焉
五木 音楽から映画から、ありとあらゆるカルチャーでアメリカがひとつのモデルだった時代が、ずっと続いていた。だから、どんなにアメリカの悪口をいっても、その背後には、アメリカに対する尊敬や憧憬()があった。
それがいまは、「見せかけだけは立派だけど中身は空っぽの巨大なビル」のように感じられます。アメリカという国の実態は別にして、そういうイメージになっていることが問題なんですよ。世界中の大衆がアメリカに対して抱いてきたイメージが崩れてしまった。
はっきりいって、昔は「アメリカ」という言葉自体が光を放っていたんです。「アメリカではこうだ」といわれたら、「そうなのか」と納得してしまうぐらいでした。僕なんか、アメリカに留学した人や、アメリカの大学で教鞭()をとったことのある人と会うと、それだけで「すごい人だな」と思ったものです。しかし、いまのアメリカはまったく光を放っていませんよね。
佐藤 日本の大学で落ちこぼれちゃったから、アメリカに行って「学歴ロンダリング」でもしてるんじゃないの? という感じですもんね。アメリカとカナダの教育はほとんど一緒だけど、アメリカの大学の授業料は1200万円(州立大で4年間、私大はさらに高額に)で、カナダは250万~500万円ですからね。だったら絶対カナダに行ったほうがいい。
五木 もちろん、ハーバード大学などがトランプ政権に抵抗しているのはわかります。そういう大学は、アメリカ建国以来のエリートの役割を背負って戦っているんでしょうから。
でも、僕らの目にはアメリカそのものが色褪()せて見える。アメリカの本質が変わったといいたいわけではないんです。もう、見た目がおじいちゃんになってしまった(笑)。そんな感じがしてならないんですよ。
佐藤 たしかに、いまの日本の高校生や大学生には、かつてのアメリカが放っていた輝きは、わからないかもしれません。
五木 野球のメジャーリーグは、アメリカ国民にとってシンボルだった。でもその野球の人気も低落の傾向をたどっています。そこに救世主として登場したのが大谷翔平でしょう。大谷人気で、メジャーリーグがかなり勢いを取り戻した。日本選手が大活躍するのはアメリカにとって残念なことなのに、彼が救世主だから、球界からジャーナリズムまで、みんな大谷の足を引っ張らずに盛んにバックアップしてるんじゃないのか。
佐藤 明らかに、野茂英雄()(1968年~)や松井秀喜()(1974年~)のときとは扱い方が違いますよね。
五木 さらにメジャーリーグは韓国や日本で開幕戦をやったりもして、必死ですよね。国技である野球自体が、もうアメリカの中で色褪せてきてる。
佐藤 対米戦争に負けた日本は、「戦後の昭和」になるとアメリカの威光に依存してやってきました。アメリカに追いつき追い越すことを目指してきたわけですが、そういう「大きな物語」が終わりに近づいていることは間違いないでしょうね。
※次回は4月28日(火)公開予定です。

