試行錯誤すること5時間、下した決断は……
ワットンさんは、同僚や地元消防署に応援を要請。現場には複数の救助隊員が集まり、救出作業が再開されました。
滑車を使って持ち上げる方法、てこを利用する方法、ロープで支える方法など、あらゆる手段が試されます。しかし、どれも決定打にはなりません。壁を壊して取り出す案も出ましたが、猫が怖がったり、怪我をしたりしてしまう恐れがあり、慎重な判断が求められました。
試行錯誤すること5時間。日没も迫ってきた頃、チームは新たな選択を迫られました。
それは、遠隔鎮静で猫の動きを抑えて、一気に引き抜くという方法です。
ただし、この方法には厳しい条件がありました。地元の獣医師は鎮静には同意したものの、取り出しまでに与えられる時間はわずか60秒。時間を超えると呼吸に影響が出る恐れがあり、非常に危険とのことでした。
いざ本番。緊張感に包まれる中、慎重に鎮静を実施。その後、声をかけあって猫の位置を確認しながら、力を合わせて猫をゆっくりと引き上げます。そして……。
猫はついに、狭い隙間から出てくることができました。体に目立った怪我はなく、無事救出に成功した瞬間でした。周囲から安堵の声が上がり、張り詰めていた空気が一気に緩みました。
マイクロチップを確認してみると……
救出された猫はその後、マイクロチップの確認が行われました。すると、驚きの事実が判明しました。
猫はアルフィーという名前のオス猫で、4年前に行方不明になっていた飼い猫だったのです。さらに家族の住所は、発見場所からわずか数百メートル先でした。
飼い主のマンディ・デイヴィスさんは連絡を受けたときの心境を、こう語っています。
「RSPCAから『アルフィーが見つかった』と連絡をもらったとき、正直信じられませんでした。今でも夢のような気持ちです。もう二度と会えないと思っていました」
デイヴィスさんによると、アルフィーは2022年、引っ越してきた直後に逃げ出してしまったそうです。懸命に探したものの見つからず、年月だけが過ぎていきました。そして再会の日となったのは、偶然にもイギリスの母の日である2026年3月15日。家族にとって忘れられない日となりました。
現在アルフィーはすっかり家に慣れ、ふかふかのベッドで眠り、娘に寄り添って過ごしているといいます。デイヴィスさんはFacebookに次のように投稿しました。
「なんという奇跡でしょう。アルフィーの救助に尽力してくださった皆さんに心から感謝します。マイクロチップの重要性を改めて実感しました。ペットが行方不明になっている皆さん、どうか希望を捨てないでください」
わずか10センチほどの隙間から始まった救出劇は、4年という時間を越えた再会へとつながりました。偶然と人の優しさが重なって生まれたこの出来事に、「助けてくれてありがとう」「ハッピーエンドで良かった!」といった声が寄せられています。

