●今後の課題は?
日本の裁判例では、たとえば選挙運動期間中の候補者の政見放送による発言であっても、虚偽の事実を摘示して第三者の名誉を毀損した場合には名誉毀損の成立が認められています(千葉地裁平成8年9月25日判決など)。
本判決は、このような流れの中では、特に変わった判断がされたわけではないと考えられます。
ただ、裁判所が「虚偽の内容を含む」ことを理由に選挙における言論の動画を削除できると考えることには、難しい問題も残っています。
まず、削除は表現そのものを消すことになるため、損害賠償よりも制約の度合いが高いといえます。
次に、明らかな誹謗中傷であれば問題は少ないとも思えますが、保護されるべき批判的な言論との境界線は必ずしも明確ではないでしょう。
そのようなものまで、虚偽の内容を含むとして削除対象とされれば、場合によっては特に政治的言論を含む表現の自由が守られなくなるおそれは残りそうです。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

