特殊な環境を共有した、御守りのような存在
――やがて、彼らは毎日一緒にいるわけではなくなります。
友達って、ずっと一緒にいるのがいいとも限らないです。つかず離れずの関係だから長続きすることもあるし、物理的に離れたからといって、心の距離までできてしまうわけでもないですよね。特に、彼らのように、特殊な場所で一緒に特殊な体験をして、同じ目標を持って頑張っていた時期を共有する相手というのは、どこか御守りみたいな存在になりうるのかなと思っていて。
受験生でいる間は、友達と差がついて自分を惨めに感じたり、逆に優越感を持ってしまって気まずさをおぼえたりすることもあるかもしれません。でも、結局何年後かにはその支流がひとつの大海原に繋がって、みんな合流して同じ目線でまた語り合える日が来たりする。本当に、「今」だけじゃないよなって思いますね。
――しかも彼らの場合、全員が当初目指したものを叶えていなくても、また会いたいとお互いに思うところが本当によくて。
私も書きながらそう思いました。みんなと同じ成功をおさめなくてもいいんですよね。不測の事態で思わぬ支流に流れた人も、順風満帆だったら出会えなかった自分と出会えたわけですし。
――作中の「人は成長という名の変化をすることを期待されすぎなのではないだろうか」という言葉がすごく沁みました。
言葉で端的に表せる良い変化や成長だけが成功ではなくて、泥臭く手探りしていった先で自分の人生の安寧を得た人も、成功者といえると思います。社会的な実績を積んでいるかどうかだけではないんですよね。世間の評価軸というものがあまりに凝り固まっていると感じることが多くて、本人にとっての充実や幸福はまた違うんだということも書きたかったのかもしれないです、と、今お話ししながら思いました。
――最後に、タイトルにこめた思いを教えてください。
まず、青春ものだということをわかりやすく表してみました。既刊について、タイトルから内容を想像できないというお声をいただくことも多いので(笑)。それと、以前から「飛距離の長い言葉」という表現が私の中にあったんですね。相手からもらった言葉が自分の中でいつまでも飛んでいるみたいに感じられることが実生活でもあるので、本作においても、「飛距離の長い言葉をありがとう」という台詞を入れようと思っていたのですが、忘れてしまって(笑)。でも三人で過ごした時間自体の飛行が長く続いていくということで物語がまとまったので。いつかは緩やかに下降していくんでしょうけれど、今はまだ飛んでいる。その時間、その関係の尊さをこめたタイトルになっています。
(小説幻冬5月号より転載)

