静かに積み上げた日々
絵画教室に通い始めた娘は、みるみる夢中になっていきました。
先生に褒められるたびに目を輝かせ、家でもスケッチブックを広げる毎日。
Nさんの言葉を思い出すたびに「この子の好きを信じよう」と心に決めていました。
ある日、地域の子ども絵画コンクールの案内を学校からもらってきました。
娘は「出てみたい!」と自分から手を挙げました。
表彰式で鉢合わせた、あの顔
娘の結果は、最優秀賞。
表彰式の会場で、Nさんの姿を見かけました。
聞けば、Nさんの娘さんも同じコンクールに参加していたとのこと。
しかしNさんの娘さんの名前は、どこにも呼ばれませんでした。
壇上で賞状を受け取る娘を見ながら、Nさんは絞り出すように言いました。
「……おめでとう」
あの日「将来どうするの?」と笑った口から出た言葉は、たった一言だけ。
それ以来、Nさんが習い事自慢をしてくることはありませんでした。
【体験者:30代・主婦・女性、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。

