謎が謎を呼ぶスリリングな展開と、キャスト陣の意味深な芝居が、視聴者の考察欲を刺激する連続ドラマ「田鎖ブラザーズ」(TBS系、毎週金曜22時)。幼少期に両親を殺害されるという過酷な運命を背負った兄弟が、ともに警察官となり、時効を迎えた事件の真相を追う――。この骨太なストーリーが、幅広い世代の間で大きな反響を呼んでいる。本作の魅力は、単なる犯人捜しという枠組みに留まらず、凄惨な過去に囚われたままの家族が、いかにして「止まった時間」を動かしていくのかという、深い人間ドラマにある。兄弟が抱く執念や葛藤を、実力派キャストが静かな熱量で演じきっており、それが視聴者の深い没入感を生んでいる。同局はこれまでも「家族の絆」と「謎解き」を巧みに融合させた名作を世に送り出してきた。本作もまた、その系譜に連なる正統派のミステリーと言えるだろう。そこで「田鎖ブラザーズ」の今後の展開を読み解く一助として、過去に放送され、話題になった「家族ミステリー」の系譜を改めて紐解いてみたい。取り上げるのは、親を亡くしたきょうだいの絆を描いた「流星の絆」(2008年)、父の冤罪を晴らすべく主人公が時空を超えて奔走した「テセウスの船」(20年)、そして誘拐事件を通して家族の絆を再構築した「マイファミリー」(22年)の3作品だ。
「田鎖ブラザーズ」とは
連続ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」「海に眠るダイヤモンド」(いずれもTBS)などで知られる新井順子氏がプロデューサーを務めるクライムサスペンス。2010年4月27日の殺人事件時効廃止のわずか2日前に両親殺害事件の時効を迎えてしまった田鎖真(岡田将生)と稔(染谷将太)の兄弟が、法では裁けない犯人を自らの手で裁くべく警察官となり、事件の真相を追い続ける姿を描く。
「流星の絆っぽいと思ってたらハヤシライスまで出てきた」
「田鎖ブラザーズ」と同じ「金曜ドラマ」枠で放送された「流星の絆」は、二宮和也、錦戸亮、戸田恵梨香の3人が演じるきょうだいが、結婚詐欺をしながら生活し、両親が刺殺された事件の時効が迫るなか犯人を追い詰めていく復讐劇で、3人は、両親を殺したのが、幼少期から自分たちを知るベテラン刑事・柏原康孝(三浦友和)だったという残酷な現実にたどり着く。「田鎖ブラザーズ」にも、兄弟に優しくする「もっちゃん」茂木幸輝(山中祟)や、真の先輩刑事・小池俊太(岸谷五朗)が登場。彼らが怪しく映るシーンがあり、「流星の絆」を思い出したという視聴者は少なくない。また「流星の絆」でキーアイテムとなっていたハヤシライスが、「田鎖ブラザーズ」の第3話(1日放送)の会話の中に登場したため、視聴者がSNSで
「ハヤシライスは流星の絆すぎる」
「流星の絆っぽいと思ってたらハヤシライスまで出てきて草」
「両親の事件が時効でハヤシライスって別のドラマになっちゃう」
「ちょ待ってハヤシライスはダメだって! モロすぎるやろ!」
「有明のハヤシライスですか?」
と盛り上がる一幕もあった。
「身体的制約がある=犯行不能」ミスリードの定番
「田鎖ブラザーズ」第3話のヤマ場は、山岳写真家の辛島ふみ(仙道敦子)が登場した最後のシーンだ。ふみの初登場は第2話(4月24日放送)の回想シーン(1995年)で、当時、ふみは山岳事故で足を負傷し、車いすなしでは生活できない障害を負いリハビリに励んでいた。しかし31年後の現代で、ふみは自分の足でしっかりと立って歩き、写真家として個展も開催。真と稔が「一番怪しい」と疑っていたノンフィクション作家・津田雄二(ずん・飯尾和樹)の財布の中に、ふみの連絡先が入っていたのも謎で、その存在に注目が集まっている。
車いすの人物が犯人という設定で思い出されるのが「テセウスの船」。31年前に北海道の村で起こった無差別毒殺事件は、被害者の1人で、その後遺症から車いす生活を余儀なくされていた木村みきお(安藤政信)の犯行だったが、物語の中盤、車いすから立ち上がったみきおが主人公の田村心(竹内涼真)に襲いかかり、犯行を告白して霧の彼方に姿を消す場面は視聴者を戦慄させた。「身体的制約がある=犯行不能」という思い込みを逆手に取るのはミステリーの定番で、ふみに疑いの目が向けられるのは、当然の流れというべきか。
兄弟は最初から手のひらの上で転がされている?
「マイファミリー」は二宮と多部未華子が夫婦役で共演した日曜劇場の作品。すべての事件の発端となった5年前の少女誘拐事件は、たたき上げの神奈川県警捜査一課長・吉乃栄太郎(富澤たけし)が起こしたもので、捜査の指揮を取りながら、自身に疑いが及ばないよう捜査をかく乱し続けていた。「田鎖ブラザーズ」も同じ神奈川県警が舞台。真と稔が警察官という立場を利用して警察内部のデータベースや資料を駆使し、時効となった事件の捜査を独自に進めているが、仮に殺害した人間が警察内部にいたとして、境遇や目的を知る人物なら、2人の動きは「すべて筒抜け」である可能性が高い。身近な人物が犯人である場合と同じように、この絶望感が真相解明に至るカタルシスを盛り上げるスパイスとなる。
「流星の絆」「テセウスの船」「マイファミリー」はいずれも、回を重ねるごとに疑惑の矛先が塗り替えられ、その都度、視聴者を熱狂的な考察の渦に巻き込んできた。「田鎖ブラザーズ」もまた、それらの名作に比肩する「裏切りの予感」に満ちており、真相へと続く道筋は、一筋縄ではいかぬ険しさを孕んでいる。

