腱鞘炎(けんしょうえん)の治療で行われることの多いステロイド注射。いざ打つとなったら、「本当に効くの?」「何回まで打って大丈夫?」「副作用はない?」と不安を感じる人も多いはずです。今回は、効果が期待できるケースや注意点、注射の限界について、長久手こせんじょう整形外科院長の大野木先生に解説してもらいました。

監修医師:
大野木 宏洋(長久手こせんじょう整形外科)
2011年、浜松医科大学医学部医学科卒業、社会医療法人社団三思会 東名厚木病院 臨床研修医。2013年、名古屋市立大学整形外科入局。公立陶生病院 整形外科、小牧市民病院 整形外科、春日井市民病院 整形外科 医長、小牧市民病院 整形外科 医長、名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院 整形外科 助教を経て、2025年に長久手こせんじょう整形外科 開院。日本整形外科学会認定 整形外科専門医・指導医、日本手外科学会認定 手外科専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
ステロイド注射の効果は?
編集部
腱鞘炎の痛みにステロイド注射は効果がありますか?
大野木先生
はい、ステロイド注射は腱鞘炎の痛みを抑える治療として有効です。腱鞘炎は腱とそれを包む腱鞘の間に炎症が起こることで痛みが生じます。ステロイドには強い抗炎症作用があり、炎症を鎮めることで痛みや腫れの改善が期待できるのです。特に、指の弾発現象を伴う「ばね指(弾発指)」などでは、多くのケースで症状の改善が得られるとされています。
編集部
どのくらいの期間で効果を実感できますか?
大野木先生
個人差はありますが、注射後数日以内に痛みが軽減するケースが多く見られます。早い人では注射後から痛みが楽になるなど、すぐに効果が出ることもあります。ただし、炎症の程度や生活習慣によっては効果が不十分な場合もあり、そのようなときには狭くなった腱の通り道を切開して痛みや引っ掛かりをなくす、腱鞘切開術が検討されます。
編集部
全ての腱鞘炎に有効というわけではないのでしょうか?
大野木先生
多くの腱鞘炎に対して有効ですが、重症例や長期間放置された場合には、効果が限定的なこともあります。また、腱の損傷が強い場合や関節の問題が関与している場合は、ほかの治療が必要になることもあります。診断に基づいて適切な治療法を選ぶことが大切です。
編集部
注射だけで治ることもありますか?
大野木先生
軽度から中等度の腱鞘炎であれば、ステロイド注射を1回行うだけで症状が改善するケースもあります。ただし、再発することもあるため、腱鞘炎の発症した原因を特定し、改める必要があります。腱鞘炎は多くの場合、パソコンやスマホ、楽器演奏など、手の使い過ぎによって起こるため、手への負担軽減を試みないといけません。
何回まで打てる? 副作用はある?
編集部
ステロイド注射は何回まで打てるのでしょうか?
大野木先生
一般的に同じ部位への注射は2~3回とされることが多く、回数には制限があります。具体的な回数は、症状や部位によって異なるため、医師に聞いてみてください。
編集部
複数回打つ場合、どれくらいの間隔を空ければよいのでしょうか?
大野木先生
通常は2~3カ月以上空けた方がよいとされています。あまり間隔が短いと、ステロイドによる局所的な副作用が出やすいことが分かっています。
編集部
副作用には、どのようなものがありますか?
大野木先生
皮膚の色が薄くなる、皮下脂肪が減る、皮膚が萎縮するといった変化が起こることがあります。また確率は低いものの、注射部位の感染症リスクもあります。適切に行えば大きな問題はそれほど多くありませんが、リスクがゼロでないため注意してください。
編集部
「腱が断裂することもある」という話を聞きますが、本当ですか?
大野木先生
頻回に注射したり、不適切な部位に注射したりすると腱が弱くなり、もろくなって断裂する可能性が指摘されています。そのため、必要最小限の回数で行う必要があります。
編集部
副作用を防ぐためにできることはありますか?
大野木先生
副作用を防ぐには、医師の指示に従い、適切な間隔で治療を受ける必要があります。また、過度に注射を打たないこと、注射後は無理な負担をかけないことが大切です。症状が改善した後、手の使い方を見直すことが再発防止につながります。

