高カカオチョコレートには健康効果が期待される一方、重金属である鉛やカドミウムが含まれることが報告されています。これらがなぜ含まれるのか、カカオ豆の栽培環境や収穫後の工程との関係を踏まえながら解説します。カカオ含有率が高い製品ほどリスクが上がる理由についても、わかりやすくご紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
高カカオチョコレートに鉛・カドミウムが含まれる理由
高カカオチョコレートには健康効果が期待されている一方、重金属である鉛やカドミウムが検出されることが報告されています。これらはなぜ含まれるのか、まずその背景を理解することが大切です。
カカオ豆が重金属を吸収するメカニズム
鉛やカドミウムが高カカオチョコレートに含まれる主な理由は、カカオの原料となるカカオ豆の栽培環境にあります。カカオの木は土壌中の成分を根から吸収する性質があり、土壌にカドミウムが含まれていると、それが豆の中に蓄積されます。カドミウムは自然界にも存在しますが、農薬や肥料の使用によって土壌濃度が高まることもあります。
鉛については、カカオ豆そのものの吸収よりも、収穫後の乾燥・輸送・加工工程での汚染が主な原因と考えられています。例えば、道路沿いでの天日乾燥中に排気ガスや塵(ちり)に含まれる鉛が付着したり、古い製造設備から微量の鉛が混入したりする可能性が指摘されています。 このように、鉛とカドミウムでは汚染の経路が異なる点が特徴です。
高カカオ製品ほどリスクが高まる理由
通常のミルクチョコレートと比べて、高カカオチョコレートはカカオマスやカカオパウダーの配合割合が高いため、重金属の含有量も相対的に多くなる傾向があります。カカオ含有率が高いほど、重金属の濃縮度も上がる構造になっているのです。
また、製品によって含有量には大きなばらつきがあります。産地や製造方法によっても濃度が異なるため、同じ「高カカオ」と表示された製品でも、重金属のリスクレベルは一様ではありません。健康目的で毎日大量に食べる方ほど、意図せず重金属を過剰に摂取してしまうリスクが生じます。
鉛・カドミウムが人体に与える影響
鉛やカドミウムは、摂取量が少量であれば短期間で大きな影響が出るわけではありませんが、長期にわたって蓄積されることで健康への影響が生じる可能性があります。それぞれの毒性について理解しておきましょう。
鉛が身体に蓄積されると起こること
鉛は身体の中で分解されることなく骨や血液中に蓄積される性質を持ちます。特に神経系への影響が知られており、子どもの場合は脳や神経の発達に悪影響を及ぼすリスクが指摘されています。成人においても、長期的な鉛の蓄積は貧血、腎機能の低下、高血圧などと関連する可能性があるとされています。
鉛の恐ろしい点は、少量の継続的な摂取であっても身体に少しずつ蓄積されていくことです。骨に取り込まれた鉛は排出が非常に遅く、数十年単位で体内に留まる性質(半減期が長い)があります。そのため、低濃度であっても長期間にわたる継続的な摂取には注意が必要です。 食品中の鉛については、世界保健機関(WHO)をはじめとする国際機関が継続的な監視の必要性を示しています。
カドミウムが腎臓に与えるダメージ
カドミウムが人体に入ると、主に腎臓に蓄積されます。腎臓はカドミウムを排出しようとする機能を持ちますが、大量に蓄積されると腎臓の細胞が傷つき、腎機能が低下するリスクがあります。カドミウムの過剰摂取による腎機能障害は、歴史的には「イタイイタイ病」の原因として知られています。ただし、現代の日本における一般的な食生活(チョコレート摂取を含む)で、直ちにこのような深刻な公害病に至るリスクは極めて低いと考えられています。過度な不安を抱く必要はありませんが、総摂取量を抑える意識は大切です。
食品を通じた日常的なカドミウム摂取量は、一般的にイタイイタイ病を引き起こすような高濃度ではありませんが、食事全体を通じたカドミウムの総摂取量には注意が必要です。高カカオチョコレートを大量に食べることで、カドミウムの摂取量が基準値に近づく可能性も否定できません。

