手が背中に回らないのは“あの姿勢”のせい? 五十肩になりやすい人と薬の適正量【医師監修】

手が背中に回らないのは“あの姿勢”のせい? 五十肩になりやすい人と薬の適正量【医師監修】

五十肩は、肩関節を包む組織に炎症が生じることで、強い痛みと可動域の制限が現れる疾患です。40〜60代に多くみられ、「炎症期」「拘縮期」「回復期」の3段階を経て回復していくとされています。自然に治ると思われがちですが、適切なケアを行わないと動かしにくさが残る場合もあります。なぜ肩関節が炎症を起こしやすいのか、その背景と発症のしくみについて解説します。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

五十肩(肩関節周囲炎)とはどのような疾患か

五十肩がどのような疾患であるかを正しく理解することは、治療や日常生活での対処を考えるうえで欠かせません。まずは基本的な特徴と病態から確認しましょう。

五十肩の定義と起こりやすい年齢層

五十肩は医学的に「肩関節周囲炎」と呼ばれる疾患で、肩関節を包む組織(関節包や腱板など)に炎症が生じることで、痛みと可動域の制限が現れます。名称の通り50歳前後に多くみられますが、40代や60代でも発症することがあります。男女ともに発症しますが、利き腕側により高い頻度で起こる傾向が知られています。

五十肩は一般的に、「炎症期」「拘縮期(こうしゅくき)」「回復期」の3段階を経て自然回復するとされています。炎症期には安静時でも強い痛みが生じやすく、拘縮期には痛みがやや落ち着く一方で腕が上がりにくくなります。回復期には徐々に動きが戻ってきます。経過には個人差があり、数ヶ月から1〜2年程度かかることもあります。

ただし、すべての方が長期間強い痛みに悩まされるわけではありません。適切なタイミングで治療やリハビリを行うことで、痛みの軽減や肩の動きの改善が期待できるケースも多いとされています。症状を我慢し続けるのではなく、早めに医療機関へ相談し、ご自身の状態に合った治療やケアを受けることが大切です。

なぜ肩関節が炎症を起こしやすいのか

肩関節は身体の中でも特に動く範囲が広い関節であり、その分、周囲の組織に負担がかかりやすい部位です。加齢や肩の使い過ぎなどによって、関節を包む組織や腱、滑液包(かつえきほう)などに炎症が起こることがあります。炎症が続くと、関節まわりの組織が硬くなったり動きにくくなったりし、肩が上がりにくい、後ろに手が回らないといった可動域の制限につながると考えられています。

加齢による組織の変化が主な背景とされていますが、糖尿病や甲状腺疾患などの全身的な病気が、五十肩の発症リスクを高めることも知られています。例えば糖尿病では、高血糖状態が続くことで肩関節周囲の組織が硬くなりやすくなるほか、血流の低下によって腱や関節の修復が妨げられることがあります。また、甲状腺機能の異常も、肩関節まわりの組織に炎症や拘縮(こうしゅく)を起こしやすくすると考えられています。

さらに、長時間のデスクワークや猫背などの姿勢不良、肩への負担が大きい生活習慣も、発症のきっかけになる場合があります。

五十肩は「そのうち自然に治る」と思われがちですが、適切なケアを行わずに放置すると、痛みが落ち着いたあとも腕が上がらない・背中に手が回らないといった動かしにくさが残る可能性があります。肩の動きに違和感を覚えた段階で、早めに医療機関へ相談することが大切です。

五十肩の夜間痛とはどのような痛みか

五十肩の症状の中で特に患者さんを悩ませるのが夜間痛です。日中よりも夜中や明け方に痛みが強くなるこの特徴は、五十肩に特有のものとされています。夜間痛の性質を理解することで、適切な対処への糸口が見えてきます。

夜間痛が起こるメカニズム

夜間に痛みが強くなる理由としては、いくつかの要因が考えられています。まず、就寝中は肩を支える筋肉が弛緩(しかん)するため、関節への物理的なストレスが変化します。日中は無意識に筋肉が肩を支えているため、ある程度痛みが緩和されることがありますが、就寝時には筋肉の支えがなくなり、炎症を起こした関節包や腱板が引き伸ばされやすくなります。

また、横になることで肩関節内の血液循環が変化し、炎症性物質が関節周囲に滞留しやすくなるとも考えられています。加えて、副交感神経が優位になる夜間は痛みの感受性が高まる傾向があるとされており、同じ程度の炎症であっても夜間のほうが強く感じやすい状態になっています。

夜間痛が特に強い時期はいつか

夜間痛は炎症期(急性期)において特に強く現れる傾向があります。炎症期には関節周囲の組織が強く腫れ、炎症性のサイトカインと呼ばれる物質が多量に分泌されます。この時期は腕を少し動かしただけでも激しい痛みを感じることがあり、夜中に何度も目が覚めるという状態になりやすいです。

拘縮期に移行すると夜間痛はやや軽減することが多いですが、寝姿勢によっては依然として痛みが出ることがあります。回復期には夜間痛はほぼ消失していくことが一般的です。ただし、痛みの経過には個人差が大きく、炎症期が数ヶ月続く方もいます。夜間痛が強い時期は特に専門医への相談が重要であり、自己判断で強いストレッチや運動を行うことは避けるべきです。

配信元: Medical DOC

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