京都大学iPS細胞研究所(CiRA)らの研究グループは、加齢や細胞へのストレスによって増えるタンパク質「CXCL13」が、膵臓がんの進行に関わる仕組みを特定したと2026年5月2日に発表しました。研究では、CXCL13の増加が慢性的な炎症を引き起こし、がんが悪性化しやすい環境を作ることが示されました。研究内容について中路先生に伺いました。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
京都大学iPS細胞研究所ら研究グループが発表した内容を教えてください。
中路先生
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)らの研究グループは、膵臓がんの進行を加速させる新たな仕組みを明らかにしたと発表しました。研究では、加齢や膵臓細胞へのストレスによって「CXCL13」というタンパク質が増え、膵臓に慢性的な炎症を引き起こすことが確認されました。本来、CXCL13による炎症反応は傷ついた組織を修復するための防御機能として働きます。しかし加齢やがん化によって炎症反応が長期間続くと慢性化し、がんの進行を後押ししてしまうと考えられています。
また、CXCL13は免疫細胞を過剰に集めることで膵臓の正常な環境を乱し、がんのさらなる悪性化を後押しすることも分かりました。さらに、マウスを使った実験では、この仕組みを制御することで膵臓がんの進行を抑えられる可能性も示されました。今回の研究は、膵臓がんや慢性膵炎の新たな予防法、および治療法の開発につながる成果として期待されます。
研究テーマになった膵臓がんとは?
編集部
今回の研究テーマに関連する膵臓がんについて教えてください。
中路先生
膵臓がんは、膵臓のなかでも「膵管」と呼ばれる部分にできることが多く、進行しやすい特徴を持つがんです。腫瘍が小さいうちは症状がほとんど表れないため、早期発見が難しいとされています。進行すると腹痛や食欲不振、体重減少、背中の痛み、黄疸(おうだん:皮膚や白目が黄色くなる症状)などがみられることがあります。また、膵臓で作られるインスリンが減ることで、糖尿病の発症や悪化につながる場合もあります。膵臓がんは周囲のリンパ節や肝臓などに転移しやすいため、体調の変化や血糖値の異常を指摘された際は放置せず医師へ相談し、必要に応じて検査を受けるようにしましょう。

