五十肩の夜間痛は、寝姿勢によって大きく左右されます。患側(痛みのある肩側)を下にした横向き寝やうつ伏せ寝は、炎症を起こした肩に直接負荷をかけるため避けることが大切です。一方、薬物療法や注射療法など医療的なアプローチを適切に活用することで、痛みのコントロールや回復の促進が期待できます。眠れないほどの夜間痛に悩む方に向け、姿勢の工夫と治療の選択肢をわかりやすくご紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
夜間痛を悪化させる「寝姿勢」の問題
夜間痛への対処を考えるとき、見落とされがちなのが寝姿勢です。どのような姿勢で眠るかによって、肩への負担は大きく変わります。適切な姿勢を意識することが、痛みの軽減につながります。
避けるべき寝姿勢とその理由
五十肩の夜間痛を悪化させやすい寝姿勢の代表は、患側(痛みのある肩側)を下にした横向き寝です。この姿勢では体重が炎症を起こした肩に直接かかり、組織への圧迫や牽引(けんいん)が生じるため、強い痛みを誘発することがあります。また、腕を身体の下や後ろに回して眠る姿勢も、肩関節に不自然な負荷をかけるため避けるべきです。
うつ伏せ寝も肩への負担が大きく、首が横に向いた状態で肩に体重がかかるため、炎症期には特に注意が必要です。寝ている間に無意識に姿勢が変わってしまうことも多いため、抱き枕やクッションを活用して姿勢を安定させることが有効です。
夜間痛を和らげる工夫
夜間痛を軽減するためには、仰向けで肘の下にクッションや折りたたんだタオルを置き、腕を少し持ち上げた姿勢をとることが有効とされています。この姿勢は肩関節にかかる負担を分散させるため、痛みが和らぎやすいです。痛みがある側の肩を自然な角度に保つことを意識しましょう。
また、健側(痛みのない側)を下にした横向き寝をとる際には、患側の腕を身体の前に出してクッションの上に乗せると、肩関節への牽引ストレスを軽減できます。これらの工夫はあくまで症状の緩和を目的としたものであり、根本的な治療にはなりません。夜間痛が続く場合は整形外科などの医療機関を受診し、医師の指導のもとで適切な治療を受けることが大切です。
夜間痛に対する医療的アプローチ
夜間痛は患者さんの睡眠の質と生活の質(QOL)に大きく影響します。自己流の対処だけでなく、医療機関でのアプローチを適切に活用することが、回復を早める鍵になります。
薬物療法・注射療法による夜間痛の管理
夜間痛が強い炎症期には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による痛みと炎症のコントロールが行われることがあります。内服薬のほか、外用薬(湿布・塗り薬)も日常的に活用されます。夜間痛が睡眠を著しく妨げる場合には、医師の判断のもとで短期的に就寝前の服薬が検討されることがあります。
関節内へのステロイド注射は、炎症を直接抑えることで痛みを和らげる効果が期待でき、特に夜間痛が強い場合に用いられることがあります。一方、ヒアルロン酸注射は関節の動きを滑らかにし、肩を動かしやすくする目的で行われる治療です。即効性はステロイド注射ほど高くないとされていますが、肩の動きに伴う負担を軽減する効果が期待されています。
いずれの注射も、肩関節周囲炎(五十肩)に対して健康保険が適用される治療として行われることが一般的であり、費用負担を抑えながら治療を受けられる場合があります。ただし、症状や状態によって適した治療法は異なるため、医師が肩の状態を確認したうえで、適切な方法を選択することが大切です。
リハビリテーションの役割と注意点
炎症が強い急性期に無理な運動療法を行うことは、症状を悪化させるリスクがあります。リハビリテーション(理学療法)は炎症が落ち着いてきた拘縮期以降に積極的に取り入れることが一般的であり、関節の可動域を徐々に回復させることを目的とします。コッドマン体操(振り子運動)は比較的初期から行える運動療法として知られており、重力を利用して肩への負担を抑えながら関節を動かせます。
リハビリは「痛みをこらえて行うもの」ではなく、「痛みの範囲内で無理なく動かす」ことが基本です。痛みを感じない範囲での運動を継続することで、関節包の柔軟性が少しずつ回復していきます。自己流でのストレッチは過負荷になることがあるため、理学療法士や医師の指導のもとで行うことをおすすめします。

