「今まで一度も、お子さんを置いて出たことはなかったんですか?」
「はい……本当に、今回が初めてです。雪が降っていて、末っ子が寝てしまって、上の子を迎えに行く5分だけならと……」
「お母さん、その『5分』で命を落とす子もいるんですよ。この子は自分で鍵を開けたと言っていますが、いつもは開けられないんですか?」
「……はい。今まで一度も自分で開けたことはありません。まだまだ背が足りないだろうと思っていて……」
自分の見通しの甘さが、情けなくて、申し訳なくて、涙が溢れて止まりませんでした。
「ちょっとした油断」が命取りに
たったの5分、長男を迎えに行くために、3歳と4歳の子どもを留守番させました。ですが、この判断が一生後悔するできごととなってしまったのです…。
幸いにも理人にケガはなく、警察も一通り事情聴取をしたのちに、引き上げて行きました。
罵倒覚悟で夫に打ち明けた夜
夜、亮平が帰宅しました。私は玄関で彼を待ち構え、今日あったことをすべて、震える声で打ち明けました。
「……警察が来たの。通報されて。私の思い込みでみおと理人を置き去りにして、危険な目に遭わせてしまったの」
怒鳴られる、軽蔑される、そう覚悟して目を閉じました。
しかし、亮平から返ってきたのは、静かなため息と、ポンと肩をたたく温かい手のぬくもりでした。
「……怖かったな。智美も、子どもたちも」
「私……最低な母親だよね。たかが5分って、甘く見て……理人がもう自分で玄関を開けられることにも気づかなくて」
「智美、それは違うよ。智美なりに子どもたちを寒い思いをさせないように考えたから置いていったんだろ?結果として留守番は良くなかったけど、誰もけがをしなくて、本当に良かった」
亮平は理人の頭を撫でながら、私を見つめました。
「警察にもちゃんと正直に話したなら大丈夫だよ。児相だって、智美がきちんと子育てしていることがわかれば子どもを連れていったりしない。何より子どもたちがママのことを証言してくれるよ」
彼の言葉に、少しだけ呼吸が楽になりました。
「俺も、智美に任せっきりにしてたのが良くなかった。今日はこの天気なんだから、もっと家庭のことを想像するべきだったよ。これは智美だけのミスじゃなくて、夫婦の教訓にしよう」
今回、子どもたちが無事で何よりでした。そして夫からは「夫婦の教訓にしよう」と言われました。
天気が悪い日に、各所に子どもの送迎をひとりで行うのは至難の業です。これからは、夫婦一方に負担が偏らないよう、気をつけたいですね。

