●判断基準は「被害届が出るかどうか」
なぜ、他人の家に押し入り、見ず知らずの住民に暴行を加えることができるのか、不思議に思う人もいるだろう。
だが、事件を主導する側は、実行役の罪悪感を小さくするよう巧妙に誘導しているとみられる。
Aによると、“仕事”に向かう移動中、指示役から「闇金の集金日を狙う」「暴力団から流れた金だ」と説明を受けたという。
そして、当時をこう振り返る。
「自分は、今までの生活や生きてきた環境で悪いことをするときの判断基準は『被害届がでるかでないか』という基準でした」
つまり、狙う相手も“悪い人間”であり、被害届は出ないと吹き込まれることで、犯行への抵抗感が薄れるよう仕向けられていたというのだ。
しかし、Aは逮捕後、自分が襲った相手が一般の高齢者だったことを初めて知った。
「今回だまされた部分がありますが、自分達は、だます側よりだまされるのが悪いと思って生活してきたので、自業自得な部分が多いと考えています。一般のお年寄りにこんなことをしてしまったことは後悔しています」
●「追い込みかけられたことありますか?」
実行役が“使い捨て”にされるケースは、何度もニュースになっている。それでも、なぜ応募する若者が後を絶たないのか。
そう尋ねると、Aは逆にこう問い返してきた。
「追い込みをギリギリまでかけられたことはありますか?」
そして、続けた。
「借金等で追い込まれた上に、わらにもすがる思いでホワイト案件に応募したら情報を抜かれ、『犯罪しろ』と言われたらやってしまうのは、自分は理解できます。冷静でない時は、目の前のことにしか対応できないので。
本当にお金の無い人が『即日現金』『借金返済』『1日5万円〜』『リゾートバイト』というような書き込みを見たら、怪しくても、1mmの希望にかけてしまう気持ちは、分かります」
そのうえで、こう漏らした。
「でも、最近はめちゃ真面目そうな人がやってるので驚きます」

追い込まれた末に見えた「1ミリの希望」が、犯罪への入口になる。
被害者への想像力は働かない一方で、追い込まれた若者が犯罪に踏み込む心理は「よく分かる」とAは語る。
こうした非対称な感覚を理解することが、“闇バイト型犯罪”を食い止めるための一歩になるかもしれない。
*この記事は、記者がこれまで元少年の受刑者に取材してきた内容をもとに作成しました。

