誰にでも、むやみに人に触れられたくない部分があります。他人には些細に見えても、本人にとっては大切な場所や物であることも。どんな間柄でも、その思いはきちんと尊重したいものですね。今回は、筆者の友人の体験談をお届けします。
愛すべき「私の城」
私にとって自宅の台所は、誰にも邪魔されない自分だけの「聖域」でした。
亡き母から譲り受け、手入れをしながら30年使い続けてきた木製の棚。
均一に火が通る、年季の入った銅の鍋。
手に馴染むよう研ぎ続けてきたプロ仕様の包丁。
それらが決まった場所に並ぶだけで気持ちが整い、「今日は家族のために何を作ろうか」と力が湧いてきたものです。
「サプライズ」という名の自己満足
その私の聖域に、先日とんでもない悲劇が起こりました。
私が一週間ほどの旅行から帰宅した日のことです。
留守を預かってくれていた息子の妻・A子さんが、笑顔で言いました。
「お義母さん、驚かないでくださいね! 留守中に私が今どきのオシャレで便利なキッチンにDIYしておきました! 古臭かった台所も今っぽくなりましたよ」
慌てて台所へ向かうと、そこには目を疑うような光景が広がっていました。
銅鍋は「重くて手入れが面倒だから」と奥へ押し込まれ、代わりに置かれたのは、カラフルで底の浅いフッ素加工の鍋。
落ち着いた色合いの壁には、チープな印象の大理石風リメイクシートが隙間なく貼られ、愛用している木製の棚は「古臭くて雰囲気が壊れるから」と勝手に撤去されています。
そして棚があった場所には、無機質なプラスチック製の収納ラックが並べてありました。

