健康維持を目的としてサプリメントを日常的に取り入れる方は少なくありません。しかし「身体に良いもの」というイメージとは裏腹に、過剰摂取や不適切な組み合わせが腎臓・肝臓に深刻な負担をかけることがあります。本記事では、サプリメントが内臓に与える影響や飲み過ぎのリスク、危険な組み合わせについてわかりやすく解説します。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
サプリメントが腎臓に与える基本的な影響
サプリメントに含まれる成分の多くは、胃や腸で吸収されたのち、代謝を経て最終的に腎臓でろ過・排泄されます。腎臓は身体の「フィルター」とも呼ばれ、血液中の不要な物質を尿として体外に送り出す役割を担っています。適量であればスムーズに処理されますが、過剰に摂取された成分の一部は、このフィルター(糸球体)で処理される際に通常以上の負荷をかけ、腎臓の負担を増大させることがあります。
腎臓がサプリメントを処理する仕組み
腎臓には毎分約1リットルもの血液が流れ込み、糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる微細な血管のかたまりでろ過が行われます。サプリメントに含まれるビタミン類、ミネラル、アミノ酸などの成分は、体内での代謝を経て腎臓に届き、不要な分が尿中に排出されます。通常の食事から摂取する程度であれば問題になりにくいのですが、サプリメントによって一度に大量の特定成分が流れ込むと、糸球体のろ過機能に対して通常以上の処理が求められます。
特に、タンパク質系のサプリメント(プロテインなど)を過剰に摂取すると、その代謝産物である尿素窒素やクレアチニンが増加します。健康な方であればこれらを適切に排泄できますが、既に腎機能が低下している方の場合は、これらの物質を排泄するために腎臓が過剰に働き続けることになり、長期的にはろ過機能のさらなる低下を招くリスクがあります。 また、腎臓の機能がもともと低下している方では、この影響がより早く、より強く現れることが知られています。
腎臓への負担が大きいとされるサプリメント成分
腎臓への負担を高めるとされる成分として、まずシュウ酸(しゅうさん)を多く含むビタミンCの過剰摂取が挙げられます。ビタミンCは身体の中でシュウ酸に変換される経路があり、過剰になると尿中シュウ酸濃度が上昇します。シュウ酸はカルシウムと結びつきやすく、腎臓内でシュウ酸カルシウムの結晶(尿路結石の一種)を形成する一因になります。
次に、カルシウムとビタミンDの組み合わせも注意が必要です。ビタミンDはカルシウムの吸収を高める作用を持ちますが、過剰摂取では血液中のカルシウム濃度が上昇し(高カルシウム血症)、腎臓に石灰が沈着するリスクが高まります。さらに、クレアチン(筋肉強化目的で使われるサプリメント)は、摂取によって血液中のクレアチニン値(腎機能の指標の一つ)を上昇させるため、腎機能の低下を誤って診断される原因となることがあります。健康な腎臓への毒性は低いとされていますが、腎機能が低下している方は、安全性評価や腎機能判定が難しくなるため、自己判断で使用せず、主治医に相談してください。また、一部の海外製ハーブ成分(過去に健康被害が報告されたアリストロキア酸を含むものなど)も腎臓への悪影響を及ぼす可能性が報告されています。
サプリメントが肝臓に与える基本的な影響
腎臓と並んで重要な解毒器官である肝臓もまた、サプリメントの影響を大きく受ける臓器です。肝臓は消化管から吸収された物質を最初に受け取り、代謝・解毒・貯蔵を行います。サプリメント成分もその例外ではなく、過剰に摂取された場合には肝臓の処理能力を超えることがあります。
肝臓がサプリメントを代謝する仕組み
肝臓には「代謝酵素(たいしゃこうそ)」と呼ばれる、外部から入ってきた化学物質を分解・無毒化する働きを持ったタンパク質が存在します。 サプリメントに含まれる脂溶性(しようせい)ビタミン(ビタミンA、D、E、K)や各種植物由来エキスは、この酵素系を通じて代謝されます。しかし、酵素の処理能力には限界があり、多種類・大量のサプリメントを同時に摂取すると、酵素が追いつかず成分が肝臓内に蓄積することがあります。
肝臓細胞への直接的なダメージとして最も知られているのが「肝細胞障害型」と「胆汁うっ滞型」の2種類です。前者はサプリメント成分が肝細胞を直接傷つけるパターンで、後者は胆汁(たんじゅう)の流れが悪くなるパターンです。どちらも血液検査でALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)やAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)などの数値が上昇することで発見されることが多くあります。
肝臓への負担が大きいとされるサプリメント成分
ビタミンAは脂溶性のため、余剰分が脂肪組織や肝臓に蓄積されやすい性質を持っています。長期にわたって過剰に摂取すると、肝臓に脂肪変性や線維化(せんいか)をもたらすことがあり、慢性肝障害につながる可能性も指摘されています。また、ナイアシン(ビタミンB3)を高用量で摂取した場合にも、肝機能障害が現れることが報告されています。
植物由来成分(ハーブや生薬など)は「天然だから安全」と思われがちですが、国内でも肝障害の報告が少なくありません。特に注意が必要なのが、お酒を飲む方の健康維持として親しまれている「ウコン(ターメリック)」です。ウコンに含まれる鉄分の過剰摂取や、成分そのものによるアレルギー反応によって、重篤な肝機能障害を引き起こす例が日本国内の学会でも多数報告されています。
また、特定のダイエット用ハーブエキスや、かつて問題となったゲルマニウム含有食品なども、肝細胞に直接ダメージを与える可能性があります。これらは製品によって成分の含有量が大きく異なるため、特に海外からの個人輸入品などは、国内基準を満たしていないリスクがあることを認識しておかなければなりません。

