頸動脈に蓄積したプラークが崩れると、血栓が脳の血管を塞ぎ、脳梗塞につながる可能性があります。この記事では、塞栓性脳梗塞が起こる仕組みや、TIAとして現れる具体的な予兆サインを解説します。あわせて、動脈硬化を進めやすい生活習慣の改善ポイントや、血圧測定・健診の活用方法についても紹介します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
脳梗塞の予兆としての頸動脈狭窄症:メカニズムを理解する
頸動脈狭窄症が脳梗塞の予兆となる理由は、血管の構造と脳への血流の関係にあります。このメカニズムを理解することで、なぜ早期発見が重要なのかがより明確になります。
プラークが血栓を生み出す仕組み
頸動脈の内壁に蓄積したプラーク(脂質・コレステロール・石灰化などの塊)は、時間とともに大きくなり、血管の内腔を狭めていきます。この段階では、血流が制限されることでめまいや一時的な症状が起こることがあります。しかし、さらに問題なのは、プラーク表面が破れたり剥がれたりしたときです。
プラークが傷つくと、その部分に血液が集まって固まり、血栓が形成されます。この血栓が血流に乗って脳の細い血管に到達し、血管を塞ぐことで脳梗塞が起こります。この仕組みによる脳梗塞を「塞栓性脳梗塞(そくせんせいのうこうそく)」と呼び、広範な脳組織が一気にダメージを受ける可能性があることが知られています。
脳梗塞の予兆として現れる具体的なサイン
脳梗塞の予兆として現れるサインは、前述のTIAに代表されます。特に頸動脈狭窄症に関連するTIAでは、片側の手足のしびれや脱力、一時的な視力障害(片目が突然見えにくくなる「一過性黒内障」など)、言語障害(言葉が出にくい・呂律が回らない)といった症状が短時間で現れて消える、という経過をたどることがあります。
これらのサインは、脳細胞が一時的に血流不足に陥ったことを示すシグナルであり、「次の発作では回復しない可能性がある」という警告と受け取るべきものです。周囲の方が本人のこうした変化に気づいた場合も、速やかに医療機関への受診を促すことが大切です。
脳梗塞の予兆を見逃さないための生活習慣の見直し
頸動脈狭窄症の進行を食い止め、脳梗塞の予兆を早期に捉えるためには、日常の生活習慣の見直しも欠かせない要素です。治療と並行して行う生活習慣の改善は、血管の健康を守るうえで大きな意味を持ちます。
動脈硬化を進める生活習慣とその改善ポイント
動脈硬化を加速させる要因としては、高血圧・高血糖・脂質異常症(高コレステロール・中性脂肪の上昇)・喫煙・肥満・運動不足などが挙げられます。これらの要因は複合的に絡み合い、プラークの形成や進行を促します。
塩分を控えた食事、野菜・魚・大豆製品を中心としたバランスのとれた食事内容、適度な有酸素運動(ウォーキングなど)、禁煙、節酒といった取り組みは、血管の状態を良好に保つうえで有効とされています。特に喫煙は動脈硬化に対する影響が大きいとされており、禁煙は血管の健康を守るうえで優先度の高い対策といえます。
定期的な血圧測定と健診の活用
日常的に血圧を測定する習慣を持つことは、高血圧の早期把握と管理につながります。家庭用血圧計を用いて朝・夜の2回、決まったタイミングで測定することが推奨されています。血圧の変動が大きい場合や、収縮期血圧(上の数値)が継続して高い場合は、医師に相談することが望まれます。
また、年1回程度の健康診断や人間ドックでは、血液検査(コレステロール・血糖値など)や血圧測定に加え、頸動脈エコー検査を組み合わせることで、無症状のまま進行する頸動脈狭窄症を発見するきっかけになることがあります。自覚症状がない段階での発見が、治療の選択肢を広げることにもつながります。

