態度を急変させ、大人しくなった男性
すると男性の表情が、わずかに揺らぎました。真っ直ぐに自分を見つめる幼い瞳。そして、気づけば集まっていた周囲の視線。そのどちらにも耐えきれなくなったのか、男性の顔はみるみる赤くなっていきました。「男性はもじもじしながらも仕方なく足を閉じ、咳払いしながらバッグを膝の上に移動すると、スマホもしまい大人しくなったんですよね」
つい先ほどまでの威圧的な態度はどこへやら。まるで別人のように静かになったその様子に、車内の緊張が一気にほどけていったそう。
バス内にはほっとしたため息と、思わずこぼれる笑顔が広がります。
「陽太は何事もなかったかのように、にこにこしながら席に座り直すと窓の景色を楽しみだして……私も張り詰めていた心が一気にほどけ、やっとホッとすることができたんですよね」
同時に祐美さんは、小さな息子のまっすぐな優しさと勇気に、静かに感動していたのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop

