“ないものねだり”って言うの、いい加減やめません?
第6話は各人物のフィーチャータイムが多かったため文字がいくらあっても足りないが最後に、茉莉が懇意にする東西新聞の記者、雨宮楓(三浦透子)の明らかになった過去を振り返ろう。
こちらも思わず涙が出てしまうほどに引き込まれた三浦透子氏の好演。

健康で親も家も普通なことを“何もない”と形容する楓は、故に自分を傷つけることで強さと優しさを手に入れ、普通ではない誰かの特別として愛されたいと願った。
悲しいことと苦しいことがないという苦悩。
そんな感情を持つ人がいるなんて、今まで思ってもみなかった。
日々何かに苦しんでいる……それこそ容姿の良さで苦しんだ迷惑系YouTuberの透からしてみれば理解し難いことだろう。
透こそ“普通”であれば、あんな思いをしなかったかもしれないからだ。
しかし、その“普通”に苦しんだ楓。
こういった悩みの感情を時に人は“ないものねだり”の一言で片付ける。
なんて優しくないのだろうと私は思う。
ないものねだりだから耐えろと、お前はこの点に恵まれているからそこは耐えろと。
でも“ある”んだよ、苦悩が。
決して人はないものに目を向けて苦しんでいるのではなく、確かにここにあるものに苦しんでいる。
楓にとってはそれが普通という苦しみから生まれる、誰かの特別になりたいという苦悩だったまでだ。
自分の痛みは他人に置き換えられない。
そんな“普通”に苦しむ楓の痛みが、楓を演じる三浦透子氏のフィルターを通して痛いほど伝わってきた。そして楓に向き合ってくれた茉莉との出会いは、自分が誰かの特別になるのではなく茉莉という特別だと思える存在との出会いなのだと感じた。
だからこそ茉莉と距離を置かれたことにあれほどまでのショックを受けていたのだろう。
決して茉莉も悪気があってのことではないが、あの楓のカラオケシーンがあまりにも辛すぎたため「茉莉、早く弁明してあげて……」と私は力強くテレビの前で願っていた。
茉莉からの通知にどれだけ安堵したことだろう。
生きていて良かったと思える世界とは?
第6話は様々な状況下に置かれた人物の掘り下げに、「えっ、こんな多種多様な悩みや特徴を持つ人々が全員、“生きていて良かったと思える世界”なんて実現できるの?」と思ってしまった。
しかし、今回描かれた中でそれぞれが救われた原因は人との出会いであることに気がついた。
透と明の出会い。
あかりと通り魔の男の出会い。
そして楓と茉莉との出会い。
誰かとの出会いで世界は一気に好転する。
もちろん悪い出会いもあるだろう。
しかしそれでも人は生きていき、また新たな“生きていて良かった”と思える出会いを探し求める。
そんな人との出会いを続けるためには、社会が、政治が健全に機能しなくてはいけない。
様々な状況下に置かれた、その“様々”をより鮮明に“個”にしていかなくてはいけない。
そうやって個を見ていく、人と向き合うことが新たな出会い、そして問題と向き合わせてくれるのだろう。
その果てに“誰もが生きていて良かったと思える世界”があるような気がしている。
あかりさん、僕はこう思いましたがどうでしょうか。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
関西テレビ『銀河の一票』( 毎週月曜夜10時~)
出演:黒木華、野呂佳代、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、岩谷健司、山口馬木也、
木野花、岩松了、松下洸平
脚本:蛭田直美
音楽:坂東祐大
主題歌:「おーへい」浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代(日本コロムビア)
プロデュース:佐野亜裕美
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク

