「サプリメントは食品と同じだから、多く飲んでも問題ない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、特定の成分を過剰に摂取すると、身体にとって明確な有害作用が現れることがあります。特に脂溶性ビタミンや一部のミネラルは、余剰分が体内に蓄積されやすく、飲み過ぎが引き起こすリスクをあらかじめ知っておくことが大切です。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
サプリメントと医薬品の危険な組み合わせ
サプリメントはしばしば「食品の延長」として軽視されますが、医薬品と同時に摂取した場合に相互作用を起こし、薬の効果を弱めたり過剰にしたりすることがあります。また、複数のサプリメント同士の組み合わせが問題になるケースも存在します。
ワーファリン(抗凝固薬)とビタミンK・魚油(オメガ3系)の相互作用
血液を固まりにくくする薬であるワーファリン(一般名:ワルファリン)は、ビタミンKと深く関係しています。ビタミンKには血液を凝固させる作用があり、ビタミンKを多く含むサプリメント(青汁・ナットウキナーゼ系サプリメントなど)を摂取すると、ワーファリンの効果が低下し、血栓リスクが上昇する可能性があります。
一方、魚油(EPA・DHAを含むオメガ3系サプリメント)やビタミンEは、ワーファリンとは逆に血液をさらに固まりにくくする方向に作用することがあります。これにより出血傾向が強まり、少しの傷でも血が止まりにくくなるリスクがあります。ワーファリンを服用している方は、サプリメントの追加・変更を行う際には必ず主治医や薬剤師に確認することが不可欠です。
セント・ジョーンズ・ワートと各種薬剤の相互作用
セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)はうつ状態の軽減を目的としてよく用いられるハーブ系サプリメントです。しかし、このハーブに含まれるヒペリシンという成分は、肝臓のシトクロムP450酵素を活性化させる働きを持っています。その結果、この酵素で代謝されるさまざまな薬剤の分解が促進され、薬の血中濃度が下がり、効果が弱まってしまいます。
具体的な影響を受ける薬剤として、HIV治療薬・免疫抑制薬(臓器移植後に使用するシクロスポリンなど)・経口避妊薬・抗てんかん薬・抗うつ薬などが知られています。特に臓器移植後の患者さんが免疫抑制薬の効果を低下させてしまうと、拒絶反応を起こすリスクが高まるため、重篤な結果につながる可能性があります。セント・ジョーンズ・ワートは欧米で広く流通しているため、海外製サプリメントに含まれていることもあり、注意が必要です。
サプリメント同士の危険な組み合わせと相乗リスク
医薬品との相互作用だけでなく、サプリメント同士の組み合わせによっても問題が生じることがあります。それぞれ単独では安全な範囲内であっても、同時に摂取することで特定の成分が過剰になったり、代謝経路で競合したりすることが起こり得ます。
鉄と亜鉛・カルシウムの吸収競合
鉄・亜鉛・カルシウムはいずれも腸管での吸収に際して同じ輸送経路(トランスポーター)を利用することが知られています。そのため、これらのミネラルを同時に高用量で摂取すると、互いの吸収を妨げ合う「吸収競合」が起こります。鉄と亜鉛を同時に過剰摂取すると、亜鉛の吸収が低下して亜鉛欠乏状態になることがあります。
また、鉄を多量に含むサプリメントとカルシウムを多量に含むサプリメントを一緒に飲むと、鉄の吸収効率が落ちるため、貧血改善を目的とした鉄サプリメントの効果が十分に発揮されないことがあります。これらのミネラル系サプリメントを必要とする場合は、服用時間をずらす(例:鉄は食間・亜鉛とカルシウムは食後など)といった工夫が有効です。
ビタミンAとビタミンDの過剰蓄積リスク
ビタミンAとビタミンDはどちらも脂溶性であり、過剰摂取で蓄積しやすい性質を持っています。マルチビタミンサプリメントにこれらが含まれているうえに、追加でビタミンA単独サプリメントやビタミンD単独サプリメントを摂取している場合、1日の上限量(耐容上限量)を超えるリスクがあります。
特にビタミンAは、マルチビタミンに含まれる量を計算せずに追加サプリメントを飲んでいると、気づかないうちに過剰摂取となるケースがあります。このような状況では肝臓への蓄積が進み、慢性的な肝障害につながる可能性があります。サプリメントを複数使用する際は、マルチビタミン製品に含まれる成分も必ず確認し、同じ成分が重複していないかをチェックすることが大切です。

