心の支えだった隣人
シングルマザーとして、5歳の娘・結衣と二人で古いアパートに住み始めて2年。
慣れない土地での孤独な育児の中、隣の大きな戸建てに住む佐藤さんは、私にとって「理想の人生の先輩」でした。
「頑張ってるわね」
「偉いわよ」
出勤時に顔を合わせるたび、佐藤さんは優しい笑みを浮かべて声をかけてくれます。自身の子どもはもう社会人だそうで、時折、結衣にお菓子をくれたり、子育てのアドバイスをくれたりすることもありました。
身寄りのない私にとって、彼女の温かい言葉は、冷え切った心を溶かしてくれる何よりの特効薬だったのです。
荒らされた共同スペース
しかし、私にはどうしても許せないことがありました。それは、アパート専用のゴミ捨て場が常に荒らされていることです。
回収日でもないのに生ゴミが放り込まれていたり、分別ルールを無視した袋が山積みになっていたり。網目状の簡易的なボックスは、誰でも中が見える状態でした。
「せっかく友達が遊びに来てくれるのに、玄関先がこれじゃ恥ずかしい…」
私は、来客がある前日には必ず、自ら軍手をはめてゴミを整理していました。放置されたゴミを市の指定袋に入れ直したり、散乱したものをまとめたり。
「誰がこんなことをするんだろう」
憤りを感じながらも、私はこの場所を綺麗に保つことが、自分たちの生活を守ることだと信じて疑いませんでした。

