狭心症の発作が起きたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。また、狭心症では胸だけでなく、肩や顎など別の部位に痛みが現れる「放散痛」が生じることもあります。この記事では、発作時の基本的な対応と発作予防のための生活習慣、さらに放散痛が現れやすい部位とそのメカニズムについて解説します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
胸の圧迫感への対処と日常生活での注意点
狭心症の診断を受けている方が日常生活の中で胸の圧迫感を感じた場合、正しい対処をとることが重要です。また、発作を予防するための生活習慣の見直しも、症状のコントロールに深く関わります。
発作時の基本的な対処法
狭心症の発作が起きたときには、まずその場で安静を保つことが基本です。立っている場合は座るか横になり、身体への負担を最小限にします。医師から「ニトログリセリン」などの硝酸薬を処方されている場合は、指示に従って舌の下に含んで使用します。ニトログリセリンは冠動脈を広げることで血流を改善し、多くの場合は通常1〜3分以内に症状が和らぎます。
一方、ニトログリセリンを1回使用しても5分以内に症状が和らがない場合や、痛みが次第に強くなる場合は、心筋梗塞へ進行している可能性が高いため、時間を置かずにすぐ119番通報をしてください。(※医師から複数回の使用を指示されている場合はそれに従いつつ、改善がなければ速やかに救急要請)「少し様子を見よう」と時間を置くことが命に関わる事態につながることもあるため、迷わず救急要請を行うことが重要です。
発作を予防するための生活習慣
日常生活の中では、動脈硬化を進行させる要因を取り除くことが発作の予防につながります。具体的には、禁煙・食生活の改善(塩分や脂質の摂り過ぎを控える)・適切な体重の維持・適度な運動・睡眠の確保などが挙げられます。寒暖差が大きい季節の変わり目や、冬場の早朝は冠攣縮が起こりやすいため、外出時の防寒対策も大切です。
また、過度なストレスは交感神経を刺激し、心拍数や血圧を上昇させるため、狭心症の誘因となります。ストレスを完全に排除することは難しいですが、睡眠の質を高めたり、気分転換の時間を意識的につくったりすることが症状の安定に役立ちます。定期的な通院と薬の継続服用を欠かさないことも、長期的な管理の要です。
狭心症の放散痛とはどこに現れるのか
狭心症では、胸だけでなく身体の他の部位にも痛みや不快感が広がることがあります。この現象を「放散痛(ほうさんつう)」と呼び、狭心症を見抜くうえで重要な手がかりとなります。
放散痛が起こるメカニズム
放散痛とは、本来の痛みの発生源(この場合は心臓)とは異なる部位に痛みが感じられる現象です。心臓からの痛みの信号が脊髄を通じて脳へ伝わる際、同じ脊髄の神経経路を共有している身体の他の部位も「痛い」と誤認されることがあります。これを「関連痛(かんれんつう)」とも呼びます。
心臓に関連する神経は、首・肩・腕・顎などの部位と同じ神経経路を共有しているため、これらの場所に放散痛が現れることが多いです。胸の症状がほとんどなく、肩こりや歯の痛みのような感覚だけを感じる場合も、実際には狭心症が原因であるケースがあるため、注意が必要です。
放散痛の代表的な部位
狭心症の放散痛が現れやすい代表的な部位は以下のとおりです。
・左肩・左腕:胸の圧迫感とともに左肩や左腕の内側にかけて広がる鈍い痛みやしびれが現れることがあります。
・顎・歯:顎全体や歯が痛むように感じることがあり、歯科疾患と間違えられることもあります。
・首・のど:首の付け根やのどに圧迫感や締め付け感が生じる場合があります。
・背中:肩甲骨の間あたりに不快感や重さとして現れることがあります。
右肩や右腕にも放散痛が及ぶことがありますが、左側に多くみられる傾向があります。これらの症状が運動後や安静時に繰り返し現れる場合は、循環器内科への相談を検討することが大切です。

