被害届は出さない。けど…
「本当に申し訳ありませんでした。警察への届け出も、覚悟しています。私たちが甘かったんです」
白井さんは玄関のタイルに膝をつかんばかりに、何度も何度も頭を下げました。その姿には、親としての責任と、自分を責める苦悶が滲み出ていました。金太くんはただ震えながら、白井さんの服の裾を握りしめていました。
「ソフトを返していただき、事実を認めてくださったので、今回は届け出るつもりはありません」
私の言葉に、白井さんはハッと顔を上げました。
「けれど、金太くん」
私は腰を落とし、金太くんの目をまっすぐに見据えました。彼は一瞬私を見ましたが、すぐに怖くなったのか視線を落としました。
「あなたがしたことは、悠也の宝物を盗んだだけじゃない。悠也があなたに向けていた『友達になりたい』っていう気持ちを、踏みにじったのよ。物は返せても、悲しい気持ちは簡単には治らないんだよ」
金太くんはしゃくり上げながら、何度も頷きました。
「それとね、しばらくあなたを悠也の部屋で遊ばせることはできません。仲直りして、また元通り、というわけにはいかないの」
私の言葉は冷たく響いたかもしれません。しかし、これが現実です。
白井さんも「ごもっともです」と、涙を拭いながら答えました。
彼女たちはその後、田中さんの家や、他の被害に遭ったと思われるお宅を1軒ずつ回るのだと言い、夜の闇へと消えていきました。
まだ小学2年生の息子・悠也にとって、今回のできごとはショッキングでした。人を疑うことを知らない悠也は、返ってきたゲームソフトをぼう然と眺めていたそうです。
ソフトの盗難も、友情が壊れてしまったことも、お互いにショックでした。盗んだ側も、盗まれた側も、悲しい思いをしてしまうことを忘れてはいけません。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ももこ
(配信元: ママリ)

