帰り際に聞こえた一言が耳に残った。「楽しかー、バリ楽しかー」。九州弁を使う女性の声だった。5月31日のファイナルコンサートをもって活動を終了する人気グループ、嵐。その集大成となるツアー「ARASHI LIVE TOUR 2026 “We are ARASHI”」がいよいよ大千秋楽を迎えた。ツアー最終の地となる東京ドーム(東京都文京区)には、歴史的瞬間をその目に焼き付けようと大勢のファンが詰めかけることが予想され、公式からも「チケットを持たない人は周辺への来場は控えてほしい」と注意喚起がなされる異例の事態となるなか、ドーム周辺にかけての一帯は、ファンの多幸感に包まれていた。
開演6時間前の午後0時過ぎ。JR水道橋駅の西口出口を出ると、早速ファンの集まりが。櫻井翔が出演するTENTIAL「BAKUNE」の広告看板を撮影しようと群がっていた。
駅とドームを繋ぐ後楽園ブリッジの上では、ウインズ後楽園に設置された大型ビジョンにライブファイナルを示す掲示が映り、ここもファンのフォトスポット化していた。
陸橋を渡り、ファンの目を引いたのが黄色いビルの天井サイネージ。ツアータイトルが5人それぞれのカラーでリボンビジョンのように掲示されていた。係員の注意に従い、通路として中央を開けながら左右両端でサイネージを撮影するファンの列が、混乱なく続いていた。ビル内にある「FOOD STADIUM TOKYO」の店内では、嵐カラーを配した注意書きがモニターに映し出されていた。
東京ドームホテルの客室窓が”メッセージボード”に
右手にある東京ドームホテルに目を向けると、前日30日に大きな話題を集めた光景が、この日も続いていた。客室の窓に、ファンとみられる宿泊客がメンバーらへの応援メッセージを掲出していた。連泊した客が引き続き窓に言葉を貼り出しており、「ホテルの外観がメッセージボードになっている」とXに投稿されたこの光景は健在だった。
この日はいくつかのイベントが重なっていた。ファイナル開演の約2時間半前には競馬の祭典、日本ダービーが発走を迎え、松山弘平騎手の1番人気ロブチェン(栗東・杉山晴紀厩舎)が激戦を制し、皐月賞とのクラシック2冠を達成した。東京ドーム近くにはウインズ後楽園があるため、競馬ファンとみられる人々も大勢いたが、彼らの関心はあくまでもレースで、その結果に集中しているようだった。
ファイナルスタートの約1時間半後には、東京・新宿区のMUFGスタジアムで、サッカー日本代表のワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会の壮行試合(アイスランド戦)が開催されるため、ドーム周辺でも代表のユニフォームを着て訪れた人の姿がちらほら見られた。嵐のラストライブを目的に来たのか、サッカーの壮行試合前に立ち寄ったのか、までは聞けなかった。
「26年間の感謝を込めて」ビジョンが映した軌跡
階段を上がってドームの22番ゲート前に到着。カプセルトイ売り場の左手に見える休業中の東京ドームシティのビジョンには、各メンバーが出演するCMや広告が次々と流れた。BAKUNE以外に、櫻井の大正製薬「VICKS」、松本潤の「佐川急便」、二宮和也の「JACCS」、相葉雅紀の「ジャパネットたかた」——それぞれの名前とブランドが交互に切り替わった。
その合間に、株式会社東京ドームのメッセージが流れた。「2007.4.29 はじめての東京ドーム単独公演、あの日から」という言葉で始まり、これまでの嵐のライブツアー一覧がスクロールし、「26年間の感謝を込めて 株式会社東京ドーム」で締めくくられた。どうやらウインズ後楽園やドーム正面のビジョンでも同様のメッセージが流れているようだ。
撮影を楽しむファンの人だかりは、東京ドーム正面とロビー・デコレーションに集中。自撮りやお手製のうちわを画角に収めながらも、周囲への気遣いを忘れない様子が印象的だった。スタッフの指示に従い、立ち止まる場所を意識しながら動くファンの姿が目についた。
ドーム周辺を回遊する中から先ほどの言葉が聞こえてきた。「楽しかー、バリ楽しかー」。九州弁のイントネーションで無邪気に飛び出したこの言葉が、チケットを手に全国から集まったファンの多幸感と、5月31日の空気を何より正直に伝えていた。

