部長から明かされたのは、後藤さんが過去にも同様のトラブルを起こしていた事実だった。かつて「双子の片方を頂戴」と後輩に迫った戦慄の過去。会社は彼女に厳重注意を下し、後藤さんは激昂しながらも居場所を失っていく。
被害者は私だけじゃなかった
「初めてじゃない……んですか?」
私は耳を疑いました。
川島部長は苦渋に満ちた表情で頷きました。
「ああ。2年前に産休に入った佐々木さんも、実は同じような悩みを抱えていたんだ。ただ、彼女の場合はここまで執拗ではなかったし、当時は『少し熱心すぎる先輩』という扱いで終わってしまった。でも、最近の後藤さんの行動は、明らかに常を逸している」
部長は、私が知らない「後輩の青木さん」から聞いたという驚愕のエピソードを教えてくれました。
青木さんが妊娠した際、後藤さんは今と同じように付きまとい、おなかの出方を見てこう言い放ったそうです。
「ほんとにおなか出てきたね!これ、2人いるんじゃない?」
「いえ、1人ですよ」と青木さんが答えると、後藤さんは真顔でこう続けたといいます。
『あら、1人隠れてるのかもね。もし双子だったら、大変でしょ?1人私に頂戴。私が育ててあげるから。ねえ、いいじゃない。私なら完璧に育てられるわよ。1人もらってあげるって言ってるのよ?』
上司が真摯に受け止めてくれた
その話を聞いて、私は全身に鳥肌が立ちました。 冗談で済ませられる内容ではありません。彼女の「子どもが欲しい」という執着は、他人の家庭を破壊しかねない危うさを秘めていたのです。
「阿部さん、安心してほしい。これは明確な『マタニティ・ハラスメント』であり、プライバシーの侵害だ。幸い、君が証拠をしっかり残してくれた。それに、過去に彼女の言動で不快な思いをした社員数名が、すでに会社に対して連名で抗議文を出す準備を始めているんだ」
「皆さん、そんなに……」
「彼女は仕事はできるが、この問題に関しては深刻だ。会社としても、これ以上放置すれば訴訟問題になりかねないと判断している。今日、これから彼女を呼び出して、厳重注意と勧告を行う」

