そんな宇垣さんが映画『サンキュー、チャック』についての思いを綴ります。
●作品あらすじ:未曽有の災害によって世界が終末へ向かうなか、街中やテレビに「39年間ありがとう、チャック」という謎のメッセージがあふれ始める。誰もがその意味を知らないまま混乱するなか、物語は広告の人物チャールズ・“チャック”・クランツの人生へと遡っていく。少年時代から大人になるまでの記憶や出会いをたどりながら、一人の平凡な男が残したかけがえのない人生の輝きが明らかになっていく。人が生きることの意味を描く感動のヒューマンミステリーを宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です)
理不尽で残酷なことだらけな人生を肯定するすべ
花が咲くたびに思い出す人がいる。期間限定の商品がコンビニの棚に並ぶたびに、雨が降るたびに、季節が巡るたびに……。たとえもう二度と言葉を交わすことはできなかったとしても、生活のそこここにその人の息吹を感じ、そのたびに心がじんわりと温まるような人と出会うことができたなら、それは幸せな人生と呼ぶことができるのではないだろうか。
私があの人を思い出すように、誰かも私のことをいつか、思い出してくれたなら。私たちはこの理不尽で残酷なことだらけな人生を、肯定できるのではないだろうか。
一人の会計士の39年間の人生が紐解かれる
大規模な自然災害や人災が次々と地球を襲い、世界は終わりをむかえつつある。通信手段も失われていく中、突如街中の看板やテレビのCMに「チャールズ・クランツに感謝します。」という謎の広告が大量に現れるように。果たして彼は何者なのか。誰がなぜ、この広告をだしたのか。世界の終わりが抒情的に描かれ、真綿で首を締めるようなゆるやかな衰退の不気味さといったら。戦争の終わらない現実世界との奇妙なリンクによってそのディストピア感はより身に迫ったリアリティを増す。
そりゃあスティーヴン・キング原作だもの、とホラーを覚悟したところで、物語はさらに過去へとさかのぼり、一人の会計士の39年間の人生を紐解いていく中で、思わぬところへと着地する。

